老人、ジェイムークに学ぶ
「ジェイムーク(JMOOC)」とはJapan Massive Open Online Courseの略称で、ウエブサイトを用いた無料公開の大学講座である。一昨年に米国で始まり、一躍普及したMOOCにならい、今春より日本でも始まった。
コンピューターを使った教育には以前より関心を寄せていたが、この事を知ったのは迂闊にも最初の講座募集の締切り後だった。急いでまだ募集中の第二弾の講座「国際安全保障論」に応募した。技術屋人生を歩んできた私には全く縁遠い分野であるが、それだけに却って好奇心が湧く。
四週に亘って毎週一回、十五分弱の単元に分かれた八乃至十回の講義の動画を見る。PowerPointを用いた講師の説明は淀みがない。字幕が出るが、筆記する暇はない。それだけに所要時間当りの講義内容の密度は高い。話をすぐに理解出来ない時がある。気が逸れたり、難い内容に眠気が出る時もある。しかし心配は無用、動画を適当に前へ戻し、何度でも再生できる。
一人ひとりの能力や状況に合わせての進捗こそが、コンピューターを使った学習に最も期待した点である。今回それを強く実感した。若い頃に比べ集中力が続かなくなった老人にはこの上なく有難い。
動画学習の後には○×式の理解度テストを受け、記述式の課題レポートを提出する。さらに無作為抽出の他受講者のレポート五人分を採点する。
今回の講義の内容は様々な国際紛争の実証的研究から現在も喫緊の関心事である日米安保条約や核抑止論にまで及んだ。自分自身の直接経験や、テレビや新聞で関心を寄せてきた事柄と深く関係するだけに、専門外の分野とは言え、私の知識欲を満たし、更なる知識欲を喚起してくれる。
受講後さっそく図書館に出掛け、今までは素通りしてきた外交や国際関係の書棚に向った次第である。また気を良くして、夏から始まる別の分野の講座にも応募した。
「知」は新たな「知」獲得の意欲を生む。認知症やボケを心配するばかりだった、老人のネガティブな姿勢を反省する機会をジェイムークが与えてくれた。