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「800字文学館」

初夏の教養番組

中村 晃也

 五月七日、新宿初台のオペラシテイのコンサートホールで「題名のない音楽会」の公開収録。佐渡裕の司会と指揮で、東京オリンピック五十周年記念と称して、当時の流行歌などを演奏。「世界の国からこんにちは」を氷川きよしが熱唱。すぐ目の前で見ることが出来た彼は、なかなかの好青年であった。

 五月二十九日、明治記念館の芙蓉の間でシャンペンとカナッペをさかなに弦楽四重奏、ついで末広の間に席を移し、今売出し中の西本智美の指揮する管弦楽団の演奏を聴いた。某社のご招待客は約百名、演奏者と同じフロアで生の音を身近に浴びた。昨年十一月にはアジア人としてはじめてバチカン国際音楽祭に招聘され、好評を博したという西本は淡麗な美人でトークも軽妙、指揮も迫力があり即、ファンになった。

 六月十七日、再び「題名のない音楽会」の収録。山田和樹指揮の東京混声合唱団の懐かしい小学唱歌メドレーを聴く。作曲者不詳の小学唱歌は、当時の西洋の名曲に文部省のお役人が歌詞をつけたらしい。最近では小学校の現役教師も知らない唄が多いとか。アメリカでもフォスターの名を知るものが少なくなった由。最後に舞台と聴衆全員で「夢見る人」を合唱して散会。

 六月二十二日、渋谷のコクーン歌舞伎。勘九郎、七之助、尾上松也の「三人吉三」。流麗な七五調のせりふ回しと舞台の刹那的な美しさ。終幕の降雪のシーンは素晴らしい。笹野高史が随所に現れ、達者な演技で笑いをとる。招待券を貰い、「こいつはハナから縁起がいいわい」の一日だった。

 七月九日、池袋の東京芸術劇場で武蔵野合唱団の定期演奏会。今年はスイスとの国交樹立百五十周年記念で、スイスのロマンド管弦楽団を招聘しての共演題目はメンデルスゾーンの「讃歌」。ここでも指揮者は山田和樹で、三百名の大合唱は迫力満点であった。

 七月十一日、ドーム球場プレミアシートでの阪神巨人戦。食事付きなので、戦況そっちのけでむさぼるように飲みかつ食べた。教養人であることをすっかり忘れていた。

二十六年七月

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