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「800字文学館」

江ノ電路線

清水 勝

 夏は湘南海岸がいい。しかし、60を超えた男どもには似合わない。そんなことから暑い夏こそ江ノ電路線10キロを歩いてみようということになった。いいじゃないかと藤沢駅を出発。
 石上駅、柳小路駅と無人駅を過ぎ、鵠沼駅でチョット寄り道。賀来神社へ。明治時代に住宅開発をする際に豊後松平家の江戸屋敷から遷座したという。続いて湘南海岸公園駅そして江ノ島駅だ。ここが江ノ島電鉄の登記上の本店所在地になっている所為か駅舎の見栄えがいい。若者は駅前の湘南スバナ通りから江ノ島に向かうが、我らは江ノ電のハイライトである腰越駅までの路面区間を歩く。この間には日蓮上人所縁の滝口寺や義経が逗留した満福寺がある。
 鎌倉高校前駅が何やら賑わしい。この駅は湘南の海が一望できることからパワースポットになっている。確かに線路と国道と七里ヶ浜に接した絶景で「関東の駅百選」も納得だ。そしてサァーファーの多い七里ヶ浜駅で焼き飯を食べ、稲村ヶ崎駅に向かうが、この辺りには私設踏切が幾つもある。それもそのはず玄関の前は線路であり、引越しの荷物運びはどうしたのだろうと思いながら極楽寺駅に着く。駅上の桜橋から極楽寺トンネルを抜ける江ノ電を見下ろし、極楽寺坂切通しを歩く。途中に紫陽花で有名な成就院があり、縁結びのパワースポットとして若い女性に人気があるが、我らは縁がないのでパス。
 長谷駅周辺は人、人、人。長谷寺と鎌倉大仏を訪れる観光客だらけである。そこで我らは鎌倉文学館に向かう。何度も鎌倉を訪れているのに誰もが初めてだという。前田伯爵の別邸だっただけに広い芝生で気持ちがいい。暫し鎌倉ゆかりの文学者に親しむ。由比ヶ浜駅の傍にあった会社の保養所は素敵なマンションになっていたことを確認し、和田塚駅を経て終点の鎌倉駅に到着した。暑い、ビールだ!
 東京に帰る仲間と別れ、歩いた路線を江ノ電に乗って帰る。車両の中はギャル、ギャルだらけ。歩いたのが正解だった。

2014.8.14

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