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「800字文学館」

ペットと飼い主の寿命

川村 邦生

 朝の散歩中、聞きなれないさえずりが頭上から聞こえた。見上げると沢山の緑色インコが電線、電柱にとまっている。カラス達と、縄張りを競っているようだ。きっと飼い主が手放し、それが繁殖したのだろう。
 多摩川ではピラニア、カミツキガメ、都会の公園ではニシキヘビ、自宅周辺にはハクビシンやアライグマが見つかっている。無責任な飼い主が手放す為に、いたるところで危険な動物に遭遇してしまう事も起きる。

 ペットを飼うに当たり注意しなくてはいけないルールがいくつかある。そのひとつに飼い主自身とペットの寿命の比較だ。一番身近な犬猫は大体見当が付き問題は少ないが、それ以外の諸々のペットが今問題になっている。ウサギ、フェレット等が10年前後、金魚8-15年、鯉は20-30年生きる。鳥は比較的長くインコ10―20年、オウムになると80年以上生きる。鶴は千年亀万年と言うが、亀は長生き動物だ。

 チャーチル首相がオウムのチャリー(メス)を1937年から飼い始め、日々ドイツに対して呪詛をしていた。
「FUCK HITLER」「FUCK THE NAZI」と。2004年の英国紙で紹介された記事に、彼が死んで37年たってもチャリーがその言葉をチャーチルの声色で鳴くと紹介された。オウムは100年生きることもあり、自身が死んだあとの事を考えて憶えさす言葉に気をつけなくてはならない例だ。九官鳥でも同じような事がある。   飼われていた九官鳥が長生きし別人に引き取られた。言う言葉が「コノクソババー」だ。上品なご家庭から来た九官鳥なのに。飼い主の言葉を真似る事を知っていた引取り者は、温厚そうなご主人がまさかと驚いた。
 我が家の黒柴犬が9歳になった。人間年齢で約50歳。残る寿命5年、私自身の年齢が72歳となる事を考え見送ることが出来ると安心した。手放す事情は色々あるが、特に高齢者は自身の年齢を考え、ペットを手放さずにきちんと見送る事の徹底を望みたい。

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