全日空は日航を超えたか
全日空が今年5月、国際線の旅客運送量「旅客人キロ」の実績で初めて日航を抜いたことを新聞が報じていた。「旅客人キロ」とは旅客一人を1キロ運ぶと1旅客人キロと算定する運送量の単位のことをいう。少ない旅客でも運んだ距離が長ければ多くなる。
全日空は5月に29億5千万旅客人キロで日航は29億1千万旅客人キロで僅かに全全日空が上回った。更に新聞はこの原因は政府が羽田空港の発着枠を全日空12便日航5便と全日空に数多く与えたためと論じていた。政府は日航の再建が民主党主導でなされたため、自民党は日航嫌いでこのような処置をとったのだと報じていた。今や日航・全日空の問題は相変わらず政争の具になっている。
日航も昭和42年ニューヨークとロンドンを結び念願の世界一周線を実現し、旅客運送量でパンアメリカンを抜いて、世界一になったことがあった。当時、日航の役職員たちは誇りもあったし、同時に傲慢さもあった。むしろ傲慢さの方が強かった気がする。世界一を維持することは大変なことで、あとは落ちてゆくしかないことを自覚しなかった。世界一だったパンアメリカンの日航も倒産した。全日空も日本を代表するナショナルキャリヤーと自負しているし、世界一を狙っているように見える。
しかし、営業成績を見ると今年の3月期で、日航の経常利益が1576億円、これに対し全日空は429億円と日航の約四分の一であった。自民党政府も最近政府専用機を日航から全日空に変えるなどして援助を与えているようだが、根本的は改革が必要だ。
私の友人に全日空の役員がいるが、「我が社はとにかくコストのかかる体質を持っている。倒産でリストラしたJALが羨ましい」と話している。航空業界第三のキャリヤー、スカイマークエアラインも経営危機に瀕している。
企業には旬がある。IT機器で世界一を誇ったソニーも今やその影は薄い。人間にも旬がある。最高の地位に達すればあとは落ちるしかない。その原因は奢りである。