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「800字文学館」

宇宙エレベーターに乗りますか

稲宮 健一

 ジャックと豆の木ではないが、そのうちエレベーターに乗って宇宙に行けるかもしれない。エイヤーの概算で、二〇五〇年までに十兆円。先週、大田区の中小企業団体主催の講演会で大林組の専門家が披露した。賛同なさいますか。

 宇宙エレベーターは地上の跨線型モノレールに似ていて、横に走るのを縦にして、遥か宇宙に登って行く構図です。レールに相当するのが鉄の百倍の引っ張り強度を持つ強靱なカーボン・ナノチューブ製の綱です。但し、継ぎ目のない一本の綱の製造は未開発だ。そして、綱は地表面から九万六千㎞のとこにあるおもりで地球の自転により生ずる遠心力で引っ張られてピーンと張る。エレベーターの籠はこの綱を登って宇宙に到達する。これが出来ると、ロケットを使わずに静止衛星を所定の軌道に投入できる。ではこの綱をどのようにして宇宙に張るのか。

 綱の両端におもりを付け、それを折り畳み、縮めて収納した箱の総重量は一〇〇トン、これを高度五〇〇㎞程の低軌道に従来のロケットで打ち上げる。数回に分割して打ち上げる必要がある。この低軌道に打ち上げた箱を、「はやぶさ」で活躍したイオン・エンジンを使って、太陽光エネルギーを推進力に変えて、時間をかけ、ゆるり、ゆるりと周回の高度を上げて、三万六千㎞の静止軌道に到達させる。

 静止高度に達した後、箱から地球と宇宙に向けておもりを先端として綱を伸ばして行く。おもりには静止位置から地球方向には重力が働き、宇宙方向には遠心力が働き、綱は順々に両方向うに伸びていく。最終的に綱の一端は九万六千㎞の宇宙空間に、もう一端は地表面に達し、全長九万六千㎞、太さ四八㎜(最大)の一本の綱が出来上げる。籠は何らか動力源を使って、綱を登ったり、降ったり、目的地に到達できる。勿論、山ほどの課題解決と、山ほどの資金と、山ほどの賛同者がなければ実現できない。世の中にはこのような夢を着々と進める人々がいるのです。

(二〇一四・十・九)

国際宇宙ステーションの予算(二〇一五年までの積算):一〇兆円(ロシアは自国管理部分を自己負担)
重量(地上):三四四トン

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