定常経済への切り替え
今月十三日、旭硝子財団、第二三回ブループラネット賞の受賞記念講演を渋谷の国連大学で拝聴した。『「自然を顧みることなく人と物に偏重する経済」を考えると』題するメリーランド大学公共政策学部ハーマン・デイリー元教授(現上級研究員)の講演と、もう一件は生物多様性に関する演題です。前者の概要を記します。
現在の経済は成長至上主義で、GDPが拡大すれば、雇用、貧困、過剰な人口も解決すると主張されている。しかし、デイリー教授曰く、現在の人間活動を支えるために必要な地下資源、水、大気を供給し、経済活動の結果生じた廃棄物を無害化できる地球の人類扶養能力は既に飽和点に達している。今その要求に応えるなら一・五個分の地球が必要との試算がある。成長の限界を意識して、定常経済に切り替えるべき。
持続可能な扶養能力に三の条件がある。一、再生可能な資源の利用速度は再生速度を超えないこと。例えば乱獲防止。二、再生不可能な資源は代替可能な資源を含めて持続可能な速度で利用する。例えば、石油から太陽光発電へなど。三、汚染物質の排出速度を無害化の速度以内にする。この三条件が生じてくる背景は惑星地球は太陽エネルギーを受け、光合成による有機物の獲得、水の循環、気象変動、宇宙空間への熱放射変動以外、地球自身が成長することはない。人間活動はこの大きな枠組内のみで許される。
にも拘らず、GDPの数量の拡大が続いている。拡大は数量でなく、質の拡大へと発想の変換が必要だ。定常経済では地球の扶養能力の枠が嵌められているで、経済活動の入口と、出口に上限を設定する。入口では物質、エネルギーの上限、出口では排出量の上限である。上限値の設定はキャップ・アンド・トレード方式が公平で良い。上限値であるキャップは政府機関や、国際的な機関が管理し、キャップ内で取得する原資はトレード、即ち、オークションで取得するである。二酸化炭素の排出権で一部実現している。
(二〇一四・十一・二七)
参考:「定常経済」は可能だ! ハーマン・デイリー、枝廣淳子、岩波ブックレットN0.九一四