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「800字文学館」

サンタクロースって いるんでしょうか

大月 和彦

 クリスマスが近いある日、小1と幼稚園の娘が、サンタクロースの話をしていた。二人ともサンタがいると信じているが、姉は学校で友達の話からサンタの存在を疑い始めているらしく、母親に疑問の手紙を書いた。
 母親は「クリスマスは親しい人同士がプレゼントを交換する日です。でも子どもたちには、お父さんとお母さんが夜こっそりとプレゼントを置くので、それをサンタの贈り物と思っているのよ」と返事の手紙を渡したが、まだ半信半疑の様子だった。
 妹はその手紙を見てもまだ「サンタは必ず来る」と言い張る。
 姉「でもこの家には煙突がないわ」
 妹「サンタさんは魔法を使って小さな隙間から入って来るんだ」
 姉「本当はお母さんの手紙の通りでも、やっぱりサンタは来てほしい」
 イブの夜、「何でもいいからプレゼント下さい。そしてこの手紙の裏に住所とサインをして下さい」とサンタあての手紙が置いてあった。

 母親は二人の枕元にリカちゃん人形を置き、姉には『サンタクロースって いるんでしょうか』*というアメリカの少女の疑問に答えた本を添えておいた。
 姉はこの本を何回も読んでいたが理解できなかったようだ。

 クリスマスが終わってまもないある日、近所の小1のK君が遊びに来た。
 K君「ねえ、サンタクロースって本当にいると思っている?」
 姉妹 声をそろえて「いる、いる」
 姉「だってね、この前のクリスマスにもその前のときにも寝ている間に、ちゃんとプレゼントが枕元においてあったし、それはサンタの絵の包み紙で、サンタのシールも貼ってあったもん」
 妹「お母さんが言っていたけどね 夜中にリンリンって鈴の音が聞こえたんだって」
 K君「ふーん、そうだろうな。包み紙やシールが貼ってあったらそう思うだろうね。僕なんかデパートでパパにこれが欲しいって言うだろう。するとクリスマスの朝にそれが置いてあるんだ。サンタの包み紙やシールは無いけどね」

 姉と妹にはK君の言葉が通じなかったようである。
 *NYサン紙1906年の社説、中村妙子訳、東逸子絵 偕成社 1977年

(14・12・24)

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