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「800字文学館」

冬の寒鰤、夏の鱧

川村 邦生

 1年で一番寒い寒の内は立春前日の節分までだ。正月明けが暦で一番寒い時期だ。昨年は晩秋から大雪の災害が発生したが、一般的に最近は暖かい冬が多くなっている。昔はもっと寒い日が多かった。
 気象庁のデーターによると、東京の場合明治時代には一日の最低気温が零度以下になる日、冬日はひと冬に70日以上あった。しかし昭和の初期には60日程度、昭和50―60年代は20日以下になり、最近は3、4日程になった。人口集中が進む東京のヒートアイランド化と地球温暖化の重複した影響と一説ではいわれている。

 冬はやはり適度に寒くないと多くの事で具合悪い。
 寒のつく言葉、寒稽古、寒中水泳、寒詣で、などの行事がある。また旬のものとして、寒ブリ、寒ボラ、寒ブナ、寒タイ、寒ガレイなどみな寒がつく。寒ノリなど寒ければ寒いほど最良品とされる。生き物が寒さから身を守るために美味い脂肪を付けるからだ。夏も鱧料理など季節の物がある。しかし暑が付く食物は見つからない。
 経済活動面では、冬物衣料品や冬物家電の売れ行きは経済の行方を大きく左右する。夏物より嵩がはり経済的に好影響を与える。
 冬は寒く、夏暑くなければ商売にならないサービス業をみる。スキー場、スケート場、海水浴場、キャンプ場だ。経済的影響面で、どちらが大きいか比較は出来ず、どちらもほどほどがいい。

 日本では、四季折々、その季節らしさが文化、生活、社会、経済に大変大きな影響を与えてきた。そしてその安定した気候が、穏やかで感情豊かな文化的日本人を作ってきた。近年のゲリラ豪雨、規模の大きい土石流、稲妻、竜巻などの発生を考えると、日本だけでないかもしれないが最近の気候は少しおかしい。異常気象は、四季折々という日本の文化、社会に悪い影響を与えるのではないかと、どうにもならない事かもしれないが心配だ。

「過ごし易い寒くない冬、過ごし易い暑くない夏がいい」ですまされない状況にあるのではないか。大変気になる。

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