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「800字文学館」

で~ぶで~ぶ百貫で~ぶ

三春

 ダイエットに励む人が多い一方で、近ごろはチョイデブやポッチャリも人気だ。しかし一般的には、BMI値が25以上なら「太りすぎ」、30以上になると「肥満」とされている。肥満率世界一を誇った(?) アメリカが、僅か1%差でメキシコに敗れたのはつい昨年のこと。いずれにしても3人に1人が肥満なのだ。

 ところで、昨年秋に柳家小三治の古典落語『付き馬』を聴きに行った。これは、金もないのに吉原で遊んだ男が妓楼の取立役(付き馬)を散々振り回した挙句に、巨大棺桶「図抜け大一番小判型」を押しつけて、まんまと逃げる噺である。小三治はこの時の枕で、「アメリカでは363㌔の遺体を火葬中に、高温油脂のために火葬場そのものが炎上した」という話題を持ち出した。デブの主要成分は肉ではなく油? アメリカではこの種のニュースが珍しくない。かといって、「土葬・水葬・鳥葬から選べ」とも言えまいし。

 日本ではどうか。「で~ぶで~ぶ百貫で~ぶ」とはやし立てる光景は過去のものだが、この「百」は「非常に多い」を意味するだけで、実際に百貫(375㌔)の巨体にお目にかかることはまずない。
 デブの代表格は相撲取り。外国人も増えた昨今の力士は特に巨漢だ。最重量力士はロシア連邦ブリヤート共和国出身の大露羅(オーロラ)で、 身長190㌢、体重276㌔。弟の結婚式に出席するために帰郷したとき、久しぶりに飛行機に乗った。座席はもちろん二人分、料金も二人分。リクライニングを倒すこともならず、着陸までじっと我慢する。なかでも一番の弱点はトイレだ。トイレでは方向転換できないから後ろ向きで入るのが力士の常識だが、大露羅はまずドアでつかえるから、トイレにも行けない。前日から水分を摂らず、食事も控えてお腹を空っぽにしてひたすら耐える。因みに、成田→ウランウデは、経由地次第では乗り継ぎを含めて22~35時間かかる。「ぼく、もう二度とイヤです」と涙目で語ったそうな。

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