解がないという解
母は下町育ちのせいか、しんじんが大好きだった。小さい頃、願掛けや、神占いによく連れて行かれた。それもあってか、心霊現象に関心がある。
東京大学救急医学分野教授、矢作直樹は多くの救命医療現場で生死の境目に立ち会い、臨死状態における体外離脱や、心霊現象を『人は死なない』で記述している。また、好奇心の塊の立花隆は『臨死体験』で詳細かつ多くの事象の調査と、霊能者との会話を通じた心霊現象を詳しく述べている。
立花は、体外離脱して、臨死状態にある自分を別な自分が見るとか、死後の世界と思われる、トンネルを抜けると、きれいな川があり、明るい光に包まれ、辺りは美しい花、そこで、亡くなった父や母らに会い、まだこちらに来てはいけないと言われて、生に戻る多くの類似の筋書に注目した。この現象を、臨死状態で脳内麻薬であるエンドルフィンが大量に吐出して、脳の奥に深く潜んでいた記憶が表に出た幻覚との説がある。しかし、体外離脱者の記憶は明晰であり、幻覚ではないと示唆している。
また、心霊が現世の人に乗り移る憑依という現象を矢作、立花共に述べている。古くはユダヤ教、キリスト教、イスラム教は神が預言者に憑依し、伝えた啓示が起源である。天理教の中山きみ、大本教の出口なおにも憑依による啓示は降った。このように啓示は世界で唯一ではない。宗教家は等しくお互いを認め、他を排斥すべきでない。
体外離脱や、憑依は合理的に再現できないので、科学的真実ではないとする意見がある。しかし、因果関係を今までの方法で説明はできないが、この現象の事実は否定できない。世の中には人智を超えた、不明な現象は沢山ある。例えば、我々が厚さのない二次元の住人だったとすると、三次元の物体を理解できない。二次元の世界では三次元の物体は輪切りにした厚さのない円周としてしか存在しない。厚さと言う概念のない人に、高さ毎に輪切りにした多数の円周から立体構造を頭に描けるだろうか。
(二〇一五・二・三、四)