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「800字文学館」

あれから半世紀

濱田 優(ゆたか)

 昨2014年、私達は社会人になって50年の節目の年を迎えた。
 それで大学と会社それぞれで同期の仲間が集い、記念行事を行った。学生時代や新入社員の頃の思い出は何年経っても色褪せない。長いブランクがあっても、当時の友達に会えばすぐ青春時代に戻って心置きなく語り合える。
 古希を過ぎた同期が多数集まることができるのも、平均寿命80歳超の長寿国になったお陰である。
 50年前の1964年は東京オリンピックが開かれた年。戦後の復興を果した日本の力を世界に示す絶好の機会と、国中が大いに沸いた。
 当時のわが国の名目GDPは約30兆円、一人当りのそれは約30万円だったが、半世紀の間にそれぞれ約480兆円、約380万円になり、米国に次ぐ経済大国になった。
 またこの年、オリンピックに合わせて東海道新幹線が開業し、高速道路網の建設も進むなど、経済成長を支える産業基盤が次第に整う。
 しかし1990年代のバブル崩壊以降、「失われた20年」といわれる長い停滞が続き、当初10%以上だった成長率が1%以下に落ち込んで、5年前にはGDP世界第二位の座を中国に明け渡した。
 加えて、「国の借金」が一千兆円超に積み上がり、その出口では荒療治が避けられないと聞く。この借金のもとになる国債が最初に発行されたのが1965年。オリンピックの反動不況で税収が不足したためという。
 この50年間、私達は企業戦士として駆け抜けてきた。前半は国とともに会社が発展し、それに個人の幸福が同期したので働き甲斐があった。が、後半構造不況に陥ってからは、リストラなど会社が生き延びるための対応に追われた。
 そんな低迷が続く中、求人倍率は下がり、格差が広がり、非正規雇用が増えて、今の若者の就職・就労は厳しい状況に追い込まれている。成長期で人手不足が基調だった私達の若い頃とは大違いだ。
 私達の世代はこの半世紀の変化に一端の責任がある。昔は良かったなどと、甘い懐旧の情に浸ってはいられない。

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