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「800字文学館」

シミの名は?

清水 勝

 志村けんが演じるお爺ちゃん役のメークは顔のシミだ。鏡を見ながら、なるほどと納得する。最近は特に増えてきている。夏場の街道歩きによる紫外線と加齢によるのだろう。シミの名は『老人性色素斑』。

 会社の先輩に久し振りに会った。顔が輝いている!
「先輩、顔艶がいいですね」
「判るか。治療したんだよ。赤坂にある美容整形でレーザー治療というやつでシミを取ったんだ。美人の女医さんが優しくて、その効果もあったようだゾ。お前もシミが増えたな。紹介するから取ってこいよ」
 保険が利かないために治療費は10万円程度らしい。女房の了解が要りそうだ。
「最近、気は若いつもりなんだが、何かと加齢による影響が出てきているな」
「人間ドックは毎年行っているじゃないの」
「うん、それとはチョット違うんだ」
「何なの、はっきり言えば…」
「まあぁ、この顔なんだが、シミを取ろうと思うんだ。保険が利かないもんでね」
「えぇ、顔のシミ? あんた、何を言っているのよ。その前にやることがあるでしょうよ」
「・・・・・・」
「顔のシミを取る前に、あんたの心のシミを取りなさいよ!」

 心のシミが取れないまま、近くの皮膚科に行く。
「ああ、このシミは保険で治療できますよ。盛り上がっているシミはイボと同じなので、液体窒素で治療します。やりますか?」
「お願いします」
「マイナス200度の液体窒素をシミの上に乗せて凍傷を起こさせ、新しい皮膚を作らせるのです。少し冷たいなと感じますが、大丈夫です。ハイ」
 治療後はかさぶたができ、一週間後にはそれが取れ、新しい皮膚になっていた。
「あぁ、上手くいきましたね。この治療は4月~9月の紫外線の多い時は出来ないんですよ。この後も紫外線には十分注意して下さいよ。他のシミはね、レーザー治療でないと無理ですが、まあ、お年寄りへのお奨めは、外出から戻ればしっかりと顔を洗うことですよ。それにもう、モテなくていいでしょ」

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