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「800字文学館」

空の自由化がLCCを創った

都甲 昌利

 広島空港での韓国・アシアナ航空に事故や、ドイツのジャーマンウイングスのフランス上空での事故で格安航空会社(LCC)が話題になっている。
 LCCは1978年、アメリカのカーター政権時代に導入された。航空旅客機の需要増大を望む、ボーイング社など航空機製造会社の焦り、超大型機の顧客需要の拡大に流された旅行業界の過当競争が生み出した異端児である。

 カーター政権の創った「空の自由化」政策、すなわち①路線参入の自由化②運賃の自由化③運航資格制限の撤廃の政策が発端とされる。重要なのは財政の健全化を理由に、40年間航空行政を指揮監督してきた航空局(CAB)が廃止されたことだ。ここで安全確保のタガが外され野放図、無責任な業界が誕生した。

 米国人が杞憂していたことが起こった。1996年に発生したヴァリュージェット社DC-9機の事故である。死者98名を出したこの旅客機の原因調査が米国運輸安全委員会によって始まった。事故の背景にある、航空業界に対する行き過ぎた政府による規制緩和が糾弾されたが、その内容は驚くべきものだった。

 機体は27年間使用したもの、エンジンをはじめ機材の部品はすべて中古品であった。酸素ボンベは機内に煙が立ち込めたにも拘らず、酸素不足で乗客は使用できなかった。航空業界では部品交換はすべて新品で行うというのが常識であったため関係者は驚愕した。部品の中古品マーケットがあるといわれた。
 運賃の低価格維持のため、コストを極力抑える余り航空の原点である旅客の安全を見失うことになった悪い例である。
 ジャーマンウイングスとアシアナはパイロットの資格を問題としているが、増大するフライトを確保するためには良質なパイロットが必要だ。
 大手のJALやANAではパイロットは不足していないが、LCCはパイロット不足が事故の原因といわれている。
 2009年、日本にもLCCができた。国土交通省に航空局(CAB)が存続しているので、空の安全は保たれるだろう。

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