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「800字文学館」

宝くじ裏表

川村 邦生

 年末近くなると宝くじが気になってくる。
 その起源は江戸時代まで遡り、庶民文化のひとつだ。最近では賞金額も年ごとに上がり、一等七億円までになった。年間売上総額は一兆円を超え、全国で大勢の人に楽しまれている。
 宝くじ発行により、発行者、取り扱い者、当選者が喜びを得られる。外れた人も楽しめるのが宝くじの特徴だ。抽選日までの高額当選という夢代金と考えれば安い。関係する皆さんハッピーだ。

 銀行勤務時代、宝くじ販売時期になると推進運動が行われ、扱い店で売れ残りが発生しないよう苦労した。割当量を未達だと販売奨励金を減額されるからだ。
 ある時来店された男性から相談を受けた。一億円当ったが妻以外に知られたくない、銀行なら誰にも知られないかという。勿論守秘義務があり大丈夫と返事したことで安心されそのまま定期預金にされた。
 三〇年以上勤務したが、周辺で高額当選くじを見たのはその時だけだ。なかなか当たらない。

 小口で毎日楽しめると友人に薦められ、数字四ケタを並べるナンバース(一口二〇〇円)を買い始めた。一カ月もせずに、何と四ケタが一致し、当選金約九〇万円、あぶく銭が入った。友人にばれてしまった後は、おめでとう、ごちそうさまと周りから言われ、あっという間の喜びで終わった。
 その時、一億円当選した男性から、奥様だけにしか知られない様にと相談された気持が理解できた。高額当選者の悩みは、寄付金依頼、借金の申出など多数声がかけられ往生することだ。ナンバースでの当選金程度ならパッと使っても精進落としですむ。一億円ではそうはいかない、しかし喜びを誰かに言いたい気持があり悩む。

 買い始めてすぐに大金をゲットした安易な気持ちがあり、その後買い続けている。しかし柳の下には二枚目の当選券は落ちてない。既に当選金以上の出費となった。たまに近い番号が出ることがある。買わないと、万一当選だったらと心配心が起きる。ナンバース継続買い、依存症、それが悩みだ。

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