ジャズの誕生
最近、TVで、一九五一年製作のダニー・ケイ主演映画「ヒットパレード」を観た。彼は喜劇映画「虹をつかむ男」で頭角を現した、早口の神経質な役柄がよく似合う俳優である。共演はバージニア・メイオ。唄とダンスの上手な長身の美女である。映画のストーリーは馬鹿馬鹿しいお笑いだが、ダニー・ケイの役割はジャズの歴史を研究している大学教授で、彼の説によると…
そもそも音楽は、アフリカの遠太鼓のリズムに合わせた歌声にはじまり、次いでアラビアで笛の音を混じえた単純な楽曲に進化する。それが南米に移ると各種の打楽器とギターを用いた、軽快なリズムと楽しいメロデイのラテン音楽に生まれ変わる。
北米では黒人霊歌とコーラスを母体としてブルースが生まれ、アフリカの強烈なビートと、種々の管楽器を取り入れた、譜面のない即興音楽、所謂ジャズが誕生する。
映画では、この経緯を当時の気鋭のジャズマンの演奏で物語るのだ。トランペットのR・アームストロング、トロンボーンのT・ドーシー、ビブラフォンはL・ハンプトン、ピアノのM・パウエル、サックスのC・バーネット、クラリネットは御馴染のB・グッドマンだ。
サッチモは当時五〇歳。キレの良い演奏とユニークな歌声で、「ハロードーリー」がヒットして一世を風靡した。私が初めてしわがれ声の彼の唄を聞いたのは高校生の時だったが、不思議と違和感はなかった。B・グッドマンは当時四二歳、彼は人種偏見を持たず、黒人のL・ハンプトンを自分のバンドに加え、映画「ベニーグッドマン物語」にみられる様に、スイング主体のダンス音楽で時代を画した。
私の大学時代には、彼のスタイルを継承した、鈴木章治のバンド「リズムエース」が大人気で、それをお目当てによくダンスパーテイに行ったものだ。
ひとくちにジャズといってもジャンルが多々あるが、いわゆるモダーンジャズよりも、この映画の時代(五十年代)のジャズの方が私の好みに合っている。(完)