粗野な資本主義
NHKスペシャルで二十世紀の資本主義の流れを放映していた。二十世紀に入ると、大量のエネルギーを使って生産機械を稼働させ、社会インフラの構築、自動車の大量生産、大型の船舶、航空機、大きな破壊力を持つ兵器などが作られた。
少し前まで馬車で移動していた社会に、自動車や汽車が取って代わった。競って化石燃料のエネルギーを使って、大きな生産機械で大構築物を作り出した。
人間が機械を使うだけでなく、チャップリンのモダンタイムスのように機械が人を使う非人間的活動が発生してきた。また、製品の余剰が生ずると、生産活動が止まり、失業者が街にあふれ、深刻な社会不安が生じた。大きな振幅で好況と不況を繰り返す不安定な社会であり、典型的な例が世界恐慌である。これは社会構造に根本的な欠陥と指摘された。
その反動として一時代前の産業革命直後の英国社会を体験したマルクスは、資本と労働との関係を定量的に明らかにした共産主義を提唱した。実際にその考えに基づき、ロシア革命が起き、ソ連が誕生した。
二十世紀の中ごろまでソ連の経済に賛同し、共感する人が多かった。貧富の差がない、不況がない社会、特に若い人には経済的な搾取がなく、義侠心をくすぐる良い社会と思われた。しかし、ソ連の経済モデルは投入産出の関係が単純なものには適応できるが、複雑になるとうまく働かない。特にモデルの中に多様な欲望を持つ人間の要素が欠けていた。社会に柔軟性がなく、社会が人間の方を強制的に社会制度に強制的に合わせようとする。
現在、資本主義社会の多くの経済モデルが作られているが、人間の多様な要求を定量的に取り込める完全なモデルは実現できてない。それは人間の要求が隣人、あるいは周囲の状況を見ながら、すぐに変化するためである。資本主義の欠陥が実際に二十世紀で表に現れたので、それを反面教師として、格差是正、社会保障を充実させ粗野な性質を補うべき。そのためには政治の大きな力が必要だ。
(二〇一五・十二・十)