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「800字文学館」

これって振込め詐欺?

川村 邦生

 携帯に着信転送メールの音がした。パソコンからの転送合図だ。それは旧来の友人からだった。数年会っていない彼から突然のメール、しかも英語だ。
 彼は英語教育を受け、英語を使った仕事をしていると聞いていた。しかし何も私に宛てたメールまでも何故英語かなと思いつつ読む。得意ではないとはいえ、インド駐在数年の経験もありこの程度を読めないはずはない。

 内容は、延々と困った事情とその原因を英語で書いてある。
「恥ずかしくて書けないが、これ以外の方法がないのでメールを送る。フィリピンに旅行で来ていて買い物に出た時、バッグを取られた。その中に航空券、クレジットカード、現金、パスポート、もちろん携帯電話が入っていた。日本大使館へ行って再発行と少額借入を頼んでいるが時間がかかると言われた。明日東京で大事な約束があって今日中にここを出発しなくてはならない。このままでは出国できないので大変困っている。君のパソコンアドレスが手帳に書かれていたので、ホテルのPCからメールした。どうかファイナンスのHELPをお願いする」と書かれている。

 確かに外国旅行を趣味にしている彼、とくにアジアへは頻繁に出かけていた。それにしてもフィリピンはひったくりが多いとは聞いていたが身近な人間が被害にあうとは気の毒にと思うのは当然だ。
 携帯電話が盗られたと書いてある。通じないとは思ったが念のため掛けてみた。もちろん非通知番号でだ。留守電になってしまったので、わかるように伝言を吹き込んだ。
 その後五分ほど経過した時、着信音がした。盗られたはずの彼の携帯からの返信だ。おかしいなー。
「大変なことになったな、どうしたのだ」と聞くと「PCがハッカーにやられた。アドレス帳をコピーされHELPメールが流された。今引っかからないよう皆さんへ連絡している」
 振込め詐欺が問題になり益々手口が巧妙になっている。外国から英文で詐欺メールが来た。時代の進歩とグローバル化を感じた。

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