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「800字文学館」

マトリョーシカ

都甲 昌利

 マトリョーシカはロシアの木製の人形で、胴体が二つに分けられ上半身を外すと中から小さな人形が次々と現れる。赤や緑の配色も鮮やかで綺麗だ。通常は6体位であるが、中には20体も出てくるものもある。最後の人形は米粒くらいになる。人形はスカーフ姿の可愛い若い女性が描かれている。女性に非常に多い名前の「マトリョーシャ」が語源だ。
 日本人がこの人形が大好きで日本へのお土産にはたくさん買って帰った。1989年、ソ連が崩壊して新生ロシアが誕生してから、表現の自由もかなり認められ新型が出た。そのマトリョーシカはロシアの歴代権力者だ。私が30年ぶりにモスクワを訪れた1998年当時、ロシアの大統領はエリツィンでマトリョーシカは彼から始まっている。その次はゴルバチョフがでてくる。それからブレジネフ、フルシチョフ、スターリン、レーニンと続き、最期は「妖怪」の人形が出てくる。なぜ妖怪か?このことが理解できる人は余程の知識人であろう。

 レーニンは皇帝ニコライ2世を殺害した。ロシア革命によって皇帝は分断されたが、ニコライ2世、アレクサンドル2世、パヴェル1世とエカテリーナ女帝やピョートル大帝まで遡るマトリョーシカ人形があってもよい。プーチンとメドべージェフがないのは現政権に遠慮をしているのか。
 マトリョーシカひとつでロシアの歴史が勉強できるのも楽しい。

 日本でもマトリョーシカを作ってもよいと思う。室町幕府の足利尊氏から義昭まで15人。徳川幕府の家康以下15代慶喜まで15人だから作れないことはない。丁度よい数だ。
 ロシアのマトリョーシカを日本で手に入れるには大変だ。先ず売っている店がない。東京の阿佐ヶ谷に一軒あるということだ。人形店で聞いたが、置いてない。ロシアから雑貨を輸入している業者の通信販売でしか手に入らない。実物を手に取って見ることができない。今や日本人にはマトリョーシカは飽きられたのだろうか。

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