日本人はなぜロシアが嫌いか
ロシアが好きだという日本人は少ない。19世紀の文学、芸術、音楽を除いては。ロシアが嫌いなのは何も日本だけではなさそうだ。ロシア周辺諸国のウクライナ、ポーランドやハンガリーなど東欧諸国は皆ロシアに対し嫌悪感を持っている。
日本人のロシア嫌いは多分、①日本が原爆を落とされて瀕死の状況にあるとき、日ソ中立条約を一方的に破棄して満州に攻め込んで、無辜の同胞を殺害や略奪をした。②挙句の果てに60万の日本人をシベリヤに連行、強制労働をさせた。そして飢餓と極寒でその中6万人を死なせた。③日本固有の領土である北方四島を奪って返還に応じない。こうした忌まわしい歴史的事実があるからだろう。
日本人がロシアを何時頃から知るようになったのだろうか。1543年ポルトガルの宣教師・フランシスコ・ザビエルが日本に来たとき、彼を通じてかすかな情報を得たかもしれない。その後、鎖国時代、長崎出島のオランダ商館に出入りするオランダ人を通じてかなりロシアを意識し出した。
自分の目でロシアを見てきた日本人が現れた。一人は大阪の商人、伝兵衛で、カムチャツカ半島に漂着、モスクワに連れて行かれピョートロ一世に謁見し、露西亜で最初の日本語教師となる。もう一人は大黒屋光太夫で同様にカムチャツカ半島に漂着、ペテルブルグでエカテリーナ女帝に拝謁し日露通商を求めるロシアの官船で帰国した。当時の日本の支配層はロシアに対してそれほど悪い感情は持っていなかったのではないか。
明治時代にはニコライ皇太子(後のニコライ二世)が来日する。滞在中滋賀県大津で暴漢に襲われ大けがをする(大津事件)。天皇自ら京都に行幸し京都の宿舎に皇太子を見舞った。この時はロシアを憎悪する感情はなかった。
1917年、ロシア革命が起き、スターリンを生んだ。恐怖政治、粛清といった暗いニュースが伝わった。最近のプーチンの言動。日本人のロシア感情は再び悪くなっている。