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「800字文学館」

『職業としての小説家』を読む

清水 勝

「掌編小説勉強会」に参加して、作品を書いたり批評したりしているものの、我が作品は一向に良くならない。そんな時に村上春樹さんが『職業としての小説家』というエッセイを出版した。しかも「小説を書くことに関する、僕の見解の(いまのところの)集大成みたいなものとして読んでいただければと思う」と書いているのだ。さらに各紙の書評等で「村上さんの心の声だ」と絶賛されている。
 早速、「小説家になろうとしている人にとって重要なのは」とある箇所を整理してみると、
①とりあえず本をたくさん読むことでしょう。
②自分が目にする事物や事象を、とにかく子細に観察する習慣を付けることじゃないでしょうか。
③マテリアル(素材)をできるだけありのままに受け入れ、蓄積することでしょう。
④記憶に留めるのは、ある事実の(ある人物の、ある事象の)興味深いいくつかの細部です。
⑤脳内キャビネットに保管しておいた様々な未整理のディテールを、必要に応じて小説の中にそのまま組み入れていくと、そこにある物語が自分でも驚くくらいナチュラルに、生き生きとしてきます。」
とある。
 本書は、全て「ですます」体で書かれており、目の前に座っている三十人程の人に向かって語りかけるように書かれているため、凄く説得力がある。
「そうか、それで書けるのか」という自信を付けさせてくれるようでもある。
 しかし、そんな簡単なものじゃない。
「とにかく書き直しにはできるだけ時間をかけます。まわりの人々のアドバイスに耳を傾け(腹が立ってもたたなくても)、それを念頭に置いて、参考にして書き直していきます。原稿の段階でもう数えきれないくらい書き直します。出版社に渡してゲラになってからも、相手がうんざりするくらい書き直します。僕にとってはそういうことが面白くてしょうがないのです。」
と、書き直す根気の重要性を訴えている。
 なお、本書には、村上作品の翻訳や学校のこと、原発についても言及している。

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