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「800字文学館」

国賊的妄言

中村 晃也

 先週からアメリカ大統領選出の予備選が始まった。民主党ではクリントン候補が初戦から苦戦を強いられ、共和党でもトップを走っていたと思われたトランプ氏が首位を奪われた。
 氏は「メキシコとの国境に万里の長城をつくれ」だの、「イスラム教徒の入国を拒否しろ」だの言いたい放題。流入移民に職を奪われ、現状に不満を持つ白人層の支持を得て前評判は高かった。だが、このような品性の人物が大統領になったら困ると考えている人は多い。

 我が国でも似たような人物がいた。迷言が多く、母親から五年間に九億円ものお小遣いを貰い、「恵まれた家庭に育ったから資産管理に杜撰だった」とか、「サラリーマンの平均年収は一千万円くらいですか?」などオバカキャラ丸出し。
 首相着任後、「普天間基地の移転先は最低でも県外」といったが「これは党の公約ではなくて党首としての発言」。移設先について「腹案があります」と大見えを切ったあと、「あれは方便です」「海兵隊は沖縄に存在しなくてもいいと思ったが、学べば学ぶほど難しい」とか。

 元総理の肩書のもと「尖閣は日本が中国から盗んだと思われても仕方がない」「南京の三十万人虐殺は認める」「ロシアがクリミア半島を併合したのは理解できる」などなど。

 当時「永田町を飛び回る謎の鳥」という題でネットにこんな文章が載った。
  中国から見れば「カモ」に見える。
  米国からみれば「チキン」に見える
  欧州から見れば「アホウドリ」に見える。
  選挙の際の公約は「ウソ」に見え、
  自己資金による偽装献金問題では「カラス」のように真っ黒。
  世間からは「サギ」だと思われている。
  この鳥自身は「ハト」だと言い張っているが、その言動から、
  日本人の大部分は、日本の「ガン」だと思っている。

 二人共、とてつもない大金持ちで世情に疎いせいか、問題発言が多いのが共通点だ。日本の謎の鳥はもう相手にされないが、トランプ氏は次にどんなカードをきり、万能のジョーカーになりうるのか興味が尽きない。

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