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「800字文学館」

週刊誌の予測

野瀬 隆平

 朝、新聞のページを繰っていたら、大きな広告が二つ同時に目に飛び込んできた。左右、見開きの下段にあるから、必然的に見比べることになる。週刊Gと週刊Pだ。
 それだけならば、いつものことで驚きはしないが、注意を引いたのは、二つの週刊誌の目玉となる記事である。期せずして、両誌ともに「これから日本の株価がどうなるのか」を占うもの。その両者の掲げる見通しがあまりにもかけ離れている、いや正反対なのだ。
 P誌は、わずか半年で「株価2万3000円まで大反騰する」とでかでかと謳っている。一方のG誌は、「株価1万4000円割れへ」急いで逃げろ―世界経済の潮目が変わった、とある。

 昨年、アベノミクスの効果なのか、それまで低迷していた株価が大幅に上がったが、年明け早々、大きく値を下げた。原油価格が暴落したためだとか、中国経済の先行き不安を反映したものである、などと評論家はまことしやかに理屈を述べている。確かに判断の難しい局面にあることは間違いない。
 しかし、両極端の予測を、こうも断定的に言い切った大きな活字が、同じ新聞の隣同士に躍っている。広告とはいえ読者の関心を引かないわけはない。

 それから二週間後、再び両誌の広告が掲載された。同じく経済の見通しに関する記事である。日銀がマイナス金利を導入して、マーケットが激しく反応した直後のことだ。この状況をどう判断するか。両誌の論調は先のものと変わらない。Pは、これでますます株価は上がると書き、一方のGは、先行きを悲観的に予測する。
 その後も、両誌の広告を見ていると、お互いに論陣を張って自己主張しているかのようで、まことに興味深い。

 株式や為替のマーケットの動きを見ていると、経済学が教える論理というよりも、国際的な政治情勢の変化や、それに過敏に反応する投資家の心理によって支配されているように思える。
 いずれにしても、期限を切っての二つの予測。どちらに軍配が上がるのか、結果が見ものである。

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