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「800字文学館」

日本の平和は?

斉藤 征雄

 戦争はなくならない、と考えるのが国際社会の常識といわれる。地域的な紛争や戦争の要因は常に存在する。その芽を摘み、仮に戦争に発展した場合でもその拡大を防ぐためには、大国の核兵器を含む強大な軍事力を背景にして世界の秩序を形成する考え方である。
 かつて冷戦時代には米ソの二極構造によって秩序が維持されたし、現在はアメリカの一極構造の維持が、世界平和の要件とされる。

 わが国の安全保障戦略もこの考え方に立脚している。同盟国アメリカの強力な軍事力を中心とした秩序の中でわが国は期待される役割を積極的に果たし、アメリカの核の傘下で平和を守ろうとするものである。
 そのために、憲法9条を改正して、個別的集団的自衛権の発動を明確に規定し且つ自衛隊を国防軍に改めて、名実ともに軍隊として位置づけるという。

 日米安保条約が定着し、自衛隊はアメリカ軍と一体的な軍事システムに組み込まれている現状を考えれば、もはや一国平和が考えにくいのは確かなのだろう。
 ただ憲法9条をどうするかは、よほど慎重であるべきと思う。憲法が、容易に戦争に踏み込めない歯止めの役割を持つことは重要と思うからである。「若者を戦場へ送るな」は非現実的スローガンという人もいるが、若者に武器を持たせて戦争をさせることに私は加担したくない。 

 加えて現在の国際情勢をみると、アメリカの一極構造が今後とも維持され機能するかどうか疑問である。
 アメリカが変わりつつあることは大統領選の論戦にも現れているし、ロシア、中国の覇権主義はアメリカ中心の秩序に対する挑戦である。北朝鮮もいる。多極化の動きは既に始まっており、それが国際情勢を不安定にしているのだ。
 中東は泥沼である。ISのテロとその報復は、多くの人間を殺戮し人道主義は地に落ちている。膨大な難民を生み、EUには亀裂が生じ、テロの標的はイスラム内外に拡大し日本も狙われる。

 子や孫に、戦争だけは経験させたくないと思うが、果たして大丈夫だろうか。

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