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「800字文学館」

ロシアチョイ覗き

中村 晃也

「厳冬のロシアの美術館巡り五日間のツアー」に参加した。アエロフロートの機体はトイレの便座が木製だった十五年前と比べて各段に改良されていた。

「搭乗前に美味しいものは食べておいたほうが良いですよ」と添乗員。「STペテルブルグのプーシキンというドーナッツがお勧め」と機内隣席のロシア娘。
 旅行中に食べたロシア料理、ペリメリ、ビーフストロガノフ、ボルシチ、サリャンカどれもサワークリーム主体の味付けで日本のほうが美味しい。
 訪れたレストランはいずれも半地下の穴倉式。バラライカの演奏つきで一杯やるにはいいが、観光客用のレストランとしてはお粗末。寒い国なのにお店には男女兼用のトイレが二人分しかないのでいつも大混雑だ。

 凍結した運河を前にした土産物店で、「ご参考までに。毛皮つきの帽子は観光用でロシア人は被りません。ロシア人は紅茶にジャムは入れません。ウオッカは毎晩は飲みません。」とガイド。本当にしていいのかどうか?
 店には大小無数のマトリョーシカが並ぶが、これはパリ万博に出展した日本のコケシがヒントになって考案された由。

 STは過去に大攻防戦があったが、ドイツ軍はネヴア河を越えて市内には侵入できず、エミルタージュ美術館は無事だった。
 後期印象派やマチス、ピカソなどの作品を主体に一日がかりの鑑賞。いやと言うほど堪能した。これでやっと大英、ルーブル、メトロポリタンとあわせての四大美術館を踏破できた。

 郊外のエカテリーナ宮殿に観光バスが着くと軍服のバンドが君が代、恋のバカンスを演奏し歓迎する。次のバスには英国国歌を。客の国籍はガイドの顔で判別しているのだそうだ。
 ビニール製の靴カバーをつけて案内された宮殿はベルサイユに似た豪華さ。有名な琥珀の間は色調の異なる琥珀が天井まで張りつめてある。鏡付きの二メートル四方の琥珀のパネル二枚が剥がされドイツに持ち去られた。うち一枚は未発見で謎のままという。
 当館の美術品は第二次大戦後は、全く増えていないそうだ。プーチン頑張れ!

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