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「800字文学館」

図書館めぐり

都甲 昌利

 図書館を頻繁に利用したのは、大学受験の時と大学生になってからだ。国立国会図書館、上野図書館、日比谷図書館などよく利用した。

 当時の国立国会図書館は赤坂迎賓館の中にあった。ベルサイユ宮殿を模した建物はかつて紀州徳川家の江戸屋敷の広大な土地に東宮御所として日本の著名な建築家や美術工芸家が美の粋を集めて建設された。庶民が入れるとは夢にも思ってみなかった。まず、正面玄関を入ると赤いじゅうたんを敷き詰めた登り階段がある。
 検索カードで本と著者名を記入して借りて閲覧室に入る。シャンデリアが輝く豪華絢爛な部屋であまりの豪華さで気が散ってしまう。

 現在、永田町の国立国会図書館はカードシステムだ。住所・氏名・職業・年齢・電話番号を記入、登録してカードを作成する。この電子カードは入館、検索に使用する。コンピューターで書籍名、著者を入力すると一連の番号が出てくる。貸し出しは不可能で読書室で読む。

 上野図書館(旧帝国図書館)は中世ヨーロッパ風の建物で威厳があった。ここも検索カードで記入し本を受け取るシステムだ。受験勉強の学生が多くいつも満席だった。

 港区広尾にある都立中央図書館はノートと筆記用具以外は持ち込み禁止だ。本棚にある本が自由に読める。希望する本がない場合はカードに書きて受付に出すと持ってきてくれる。

 千代田区立日比谷図書館を利用した時、閲覧室に千田区民だけが使用できる部屋がある。誰もいなかったのでここで読んでいたら、「千代田区民ですか」と聞く。「否」と言ったら追い出された。

 読みたい本が多くあるが、本を溜めたくないので買わない。私は図書館を利用している。一番利用するのは近くの「区立新宿図書館」だ。人気のある新刊本は何週間か待たされるが、他人より先に読む必要はない。村上春樹の『1Q84』や又吉直樹の『火花』は借りて読んだ。誰が読んだかわからない本を手にするのは不潔という人がいるが、私はかまわない。

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