「デノミ」の効用
デノミとは、言うまでもなくデノミネーションの略である。
通貨の単位を変更すること。例えば、これまで百円であったものを一円と読み換える。単なる名称の変更であまり経済的な影響がないように思えるが、そうではない。通貨の単位を変えるのであるから、当然、新しい通貨、「新円」が発行され、それまで流通していた通貨は一定期間を過ぎると使えなくなる。
個人や企業が持っている現預金は、銀行で新しい通貨に交換しなければならない。タンス預金が、白日の下にさらされるのである。
ここで、マイナンバーが重要な意味を持ってくる。銀行に口座を開設したり新円に換金するのに、この番号の提示が必要であると定めれば、すべての預貯金は、完璧に政府によって捕捉されることになる。
経済格差を解消するには、持てる者の金融資産に課税し、あるいは相続税の税率を上げて貧しき者に再配分するのも一つの方法と考えるが、資産を正確に捕捉するのが難しく、実現が困難である。しかし、デノミによって少なくともそのバリヤーはなくなる。新円に交換する時に、貧乏人にはボーナスを与え、金持ちからは徴税することで、格差の縮小をより効果的に行うという案も考えられる。
ただ、ここに大きな問題が立ちはだかる。
この動きを察知した金持ちや企業は、これまで以上に資産を海外に逃避させようと努めるだろう。パナマ文書で話題となっているタックス・ヘイブンの問題である。
逃げ道をふさぐことは、一国の力だけではできない。同じ問題意識をもつ各国が連携して、税逃れを防ぐ国際的な制度を確立する必要がある。
世界中の資産家たちは、陰に陽に政権に圧力をかけこぞって阻止に動くであろう。課税しようとする政府と逃れようとする資産家との知恵比べ、「いたちごっこ」となる。
しかし、民主主義がまともに機能するする国では、1%の大金持ちよりも残りの99%の人たちの方が勝つと信じたい。いや、そうでなければならない。