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「800字文学館」

「青い空から降るものは」

富岡 喜久雄

 世界から伊勢に首脳が集まった。中でもオバマ大統領の乗り物は凄かった。二台のヘリにそれを両脇からオスプレイが警護し、降りて乗り込むリムジンは堅固な装甲車のようで防弾ガラスは三十センチだという。
 敗戦時に少年だった身は、敵機に届かない高射砲や戦闘機が体当たりしても落ちないB29を思い出して、彼我の物量と技術の差を再び見た思いがした。最近はアベノミクスも調子が悪く、加えてトランプノミクスなる言葉まで新聞紙上に出るようになっては、再び貧しかったあの頃に戻ってしまわないかと心配になってくる。 でも、ヘリコプターやドローンでお金を撒くべきと主張する人も居るから安心できるのだろうか等、あれこれ思案の内に嘗て喜劇役者が歌っていた戯れ歌を思い出した。
「青い空から札の束が降って、ごろり昼寝の頬っぺたを叩く。五両、十両、百両に千両。遣い切れずに目が覚めた。スッカラかんの空財布、ても、ルンペン呑気だね」

記憶に自信はないが、こんな文句だったと思う。

 当ペンクラブには経済、金融の泰斗が多い。財政赤字は危険だから均衡財政必達すべきと主張する向き、一千兆円の借金など怖くもないと力説する人、時価会計で評価すれば、国のバランスシートは債務超過でなく心配無用と説明する者、時価発行時の資本剰余金を還元して株高にせよ等々、多士済済である。日銀までもが2%のインフレ策を唱え、国債買取りで資金だぶつかせれば消費、投資が増えると考えたようだが、そうはならずにマイナス金利まで出してきたから街では金庫が売れる始末とやら。一方、物理学者は方程式を駆使してハイパーインフレの到来を警告する。そこで江戸時代の知恵に倣い、ペーパー・マネーより現物だと金貨を床下に埋め込めば、突発地震で流失とかは冗談としても、タックス・ヘイブン利用する知恵も情報もない善男善女の庶民は戸惑うばかりである。
 碩学の諸氏には、この辺りでぜひ結論を出してもらいたいものである。

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