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「800字文学館」

住みやすい日本

稲宮 健一

 少子高齢化が進み、先細る日本というイメージが広がっている。戦争がなく、平和で世界から好かれる国になるにはどうするかという話を聞いた。結論は多くの国から来てもらい、住んでさらに、定住して、多様性のある国になるべきだとのこと。

 戦争のない国という点では米国は落第だが、世界の最先端のものを多数創造し、活気のある国で、国土が広いのでゆったりした住環境が人々を引き付けている。
 第二次世界大戦以前、科学、工業の中心は欧州であった。原子物理学、生物学、医学、工学、化学プラント等を確立した科学者、技術者は英独仏に集中していた。戦争による国土の荒廃、ユダヤ人の迫害などで、この知識の集団が米国に移った。国内に戦火のなかったことが幸いし、移民が集まり、自由で新鮮な発想を持った人々がIoT産業を主導した。

 多くの人々が日本に住みたいと思わせる仕組みをここから学習してみよう。日本の持っている資産を生かしてみよう。現下、少子高齢化のため、かつて大量に建てた団地などで空き部屋が増えている。団塊の世代の切実な要求で介護産業が拡大している。この資産も、団塊の世代が過ぎると使用率が下がる。この点をプラス思考で考え、空き部屋は近隣の国からの留学生用に活用する。通学補助で通学の便を図る。団塊の世代向けに拡充した介護の経験、資産は少し遅れて、近隣の国々から大きな需要が期待できる。

 何も、IoTだけが産業ではない。高齢化に伴い必然的に発生する需要が日本で高い品質で満たせるなら、産業として投資をする価値があるのではないだろうか。留学生への投資はすぐに成果が顕在化しないが、確実に日本の未来に明るい希望をもたらす。
 高齢になっても安心して過ごせる生活環境は少し遅れて起きる近隣の国々から強い期待で迎えられるだろう。今行っている介護への投資が十年後に近隣に喜ばれるサービスになるだろう。目先のインフレ期待も大切だが、次世代にわたり喜ばれる国造りは大切だ。

(二〇一六・六・二〇)

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