世界の規格
法律は国家の主権がおよぶ範囲で有効であるが、他に国際間で守るべき規格などの約束ごとがある。かつて現役のころ宇宙の世界規格の合わせに出席したことがある。宇宙開発ではロケットの打ち上げと、国際宇宙ステーション、気象衛星、宇宙探査衛星などが花形である。しかし、これらの宇宙機は常に地上の管制局から監視、指令されて始めて正常な機能が発揮できる。
NASAは世界中の宇宙機を管制できるように米国本土、南米、欧州に約二十箇所に及ぶ管制局を持っていた。しかし、維持に膨大な予算がかかるため、広く宇宙を見渡せる数個の静止衛星を打ち上げ、衛星が衛星を管制するシステムを開発した。全世界の衛星監視することなので、欧州、日本も同様な衛星を打ち上げたと考え、NASAにおいて米国、欧州、日本で打ち合わせを持った。
その席で、日本は既に構想が固まっている米国のデータ中継衛星の技術データをなるべく引き出したいと考えていた。ところが欧州の代表はNASAが配布した資料を見て、机を叩いて、この程度の資料では詳しいことは分からない。当然もっと詳細な資料を配るべきと平然と要求する。その態度は、痩せたりとは言え、我々欧州は米国の兄貴だ、その裏には長さ、質量の原器はフランスに、時刻基準は英国にあったと言う自負かもしれない。
かつて産業界では工業規格はJIS、さらに質の高い規格として米軍のMIL規格が幅を利かせていた、しかし、現在世界の規格はISOであり、ISOに準拠しない製品は世界に輸出できない。製品の特性のみならず、製造工程や、製造環境も規定している。工場に行くとISOに準拠のプレートを正門に掲げてある。ISOはジュネーブに本部がある欧州が中心となっている規格である。
現在話題になっているハーグにある国際仲裁裁判所の判決は規格ではないが、当事国は尊重すべき約束事と考える。予め取り決めた慣例を選択的に反古すれば、しっぺ返しを受けるだろう。
ISO:International Organization for Standardization
MIL:Military Standard