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「800字文学館」

バック・トゥー・ザ・フューチャー

平尾 富男

 カナダ出身の映画俳優、マイケル・J・フォックスの名が世界的に有名になったのが、映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズである。そのマイケルには一九九〇年頃から病の兆候が出始め、後にパーキンソン病であることが発覚した。
 この時のマイケルは、「カナダ出身の只のマイケルに戻った」と語る一方で、パーキンソン病で苦しみながら、この重い病を治療するために財団を設立し、苦しむ人を救う活動を開始した。「華々しいハリウッドでの活躍もこれまでか」と言われたマイケルも、今や五〇代となり再び俳優業での主役の座を復活させた。
 日本の政界でも「復活」が行われつつある。
 第二次安倍内閣が発足して直ぐ(二〇一三年一月)、英国の雑誌「エコノミスト」は、安倍政権と「日本会議」の関係について「バック・トゥー・ザ・フューチャー」というタイトルの記事を掲載したのだ。そこで論評されていたのは、「安倍政権の閣僚十九人を見ると、安倍総理が長期的にどんな方向性を目指しているかが分かる」と言うことだった。このメディアは当然のことながら、「昭和の妖怪」岸信介を祖父に持つ安倍首相の右翼的本質、戦前回帰への情念を熟知しているのだ。
 日本会議は、一九九七年の発足以来、「誇りある国づくり」をスローガンに、「憲法改正」「侵略戦争否定」「愛国思想の育成」「ジェンダーフリー批判」「権利偏重批判」「道徳教育強化」などの狂信的な保守的主張を展開してきていることで海外でも話題になっている。
 既に集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊法の改正など有事法制を整備して、軍備強化で世界平和に貢献するという方針も、日本会議が目指す「誇りある国づくり」の一環なのだ。
 日本ではあまり騒がれないが、欧米メディアが「日本最大の右翼組織」と呼ぶのが「日本会議」。安倍政権の閣僚の多くがこの組織に直接繋がる議員団体に属している。朝日新聞によると、この団体の事務局は「生長の家」の出身者がその中枢を担っている。

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