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「800字文学館」

山椒ビール

大越 浩平

 一関市の酒造会社が「山椒ビール」を造っている。早速取り寄せて試飲したが、おもしろい。一人で楽しむには勿体ない。

 平均年齢70歳後半の活力溢れる老人達が、標高1400メートル、山梨の山荘で「秋の入り口を楽しむ会」を催すことになり、そこで皆に試飲して評価して貰おうと持参した。つまみには、自家製山女魚の燻製・クレソン・アメーラトマト・レモン添え。白カビサラミ。黒キノコのオリーブオイル・白ワイン蒸し。サゴチの塩焼き。生ハムサラダ。シメは人参、牛蒡、里芋に種々のきのこ入りの豚汁だ。加えて、赤白ワイン、純米日本酒、ウイスキー、芋焼酎と役者は揃った。

 まず山椒ビールで乾杯、いける。サラリとした飲み口、喉ごしが良い。すぐ二杯目に。柔らかい山椒の香り、微かな舌先のしびれ、甘さとコクが広がる。燻製、サラミとの相性も良く味を引き立たせる。皆美味しいと一様に口を揃えた。合格。

 一般的に地ビールは一杯目に個性が出過ぎて、二杯目は考えながら構えて飲む事が多いが、このビールは素直に飲める。ただしジョッキでぐいぐい飲むビールではない。冷えたシャンパングラスに一杯あたりが適当だろう。数杯続けて飲むと、山椒のしびれが舌先に残り邪魔になる。

 日本発、このビールの個性は世界に通用するだろう。泡のように消えてほしくない。品質の安定第一。しかし市場は狭く好事家の世界だ。日本や世界でこの風味を求めている顧客を、如何に開拓するかが存続のカギだ。

 酒造会社に提案したい。山椒ビールを使った料理コンテストや、食材会社や輸出商社と提携して、山椒ビールをおいしく飲む、ベストマッチおつまみ選手権など、どうだろう。素人の部(含む外国人)、料理人の部等で競ってもらったら面白い。ある程度のレシピが揃ったら、レシピに見合う料理店に、提案型のどぶ板営業だ。ターゲットは、個性が売りの店、外人の多く来る店、長続きしている店などに丁寧に売り込んではどうか。

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