作品の閲覧

「800字文学館」

売らんかな

三 春

 近所に大手の古本屋B社が開店したので覗きに行った。古本の買値が異常に低いことで有名なB社だが、ここは同社が経営するファッション専門のリサイクルショップだ。いくらで買い取ったのか知らないが、店内の値札は新品の1~2割、状態も悪くない。次々と客がやってくる。不景気と勿体ないの合流点に「それでもお洒落を」というスパイスを振りかければこんな店が繁盛する。

 そういえば我が家にも出番のない物が山と眠っている。仕分けてみたらダンボール箱3つになった。ネットで調べると大阪のE社が送料負担・高値引取りとあるので、すぐ申し込んで発送。一週間後に査定結果のメールが届いた。
「本来なら無価値ですが特別に483円でお引取りします」
(えっ? ブランド品もあれこれ入れたのに冗談じゃない、売るもんですか!)
断ると、
「これもご縁ですから983円にUPしますがいかがでしょうか」
いかがもヘチマもない。段ボール箱は長旅から虚しく帰ってきた。ゴミに出すのは忍びない、さりとてまた仕舞うのも面倒だ。さてどうしよう。

 こんな時には似たような話が飛び込んでくる。数日後にある買取り業者がやってきて、大阪帰りの一部に9000円の値をつけた。貴金属歓迎だというので母の遺した金の櫛と切れたネックレスを見せたら18000円で譲ってもらえないかと。壊れ物だし遺品は他にもあるのであっさり売り払った。その後また別の業者が大阪帰り数品を買い取っていった。だいぶすっきりしたが、まだまだ。

 そこで残り物に新品の靴を加えてあのB社に持ち込んだがすべてNO。理由を尋ねると、「微かな傷があるので商品になりません。持ち帰りますか? 私どもが廃棄してもいいですよ」

 売れ残りをゴミ袋に詰めながら思った。
・B社では明らかな傷物もそれなりの廉価で売っている。客に捨てさせた物に違いない。
・買取り業者は千差万別。一社がダメでも他社なら買い取る。
・「良い品」「高かったのに」は自分勝手な思い込み。需要が重要。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧