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「800字文学館」

無くなる職業

野瀬 隆平

 大勢の駅員が改札口で鋏を片手に乗客の定期券をチェックし、切符に鋏を入れる。かつては朝夕駅で見慣れた光景だった。今やその姿はない。改札口は自動化され切符を通すかスイカや定期券をかざすだけで済む。
 一方、「みどりの窓口」では、いくつもの窓口に係員がそれぞれコンピューターの端末に向かっている。コンピューターとインターネットの導入による「産業革命」がもたらした変化の一例である。
 現在、更なる革命が起きようとしている。3DプリンターやIoTに加え、人工知能(AI)とロボットが進化し、普及することによる変革だ。

 数年前、オックスフォード大学のオズボーン准教授が、近い将来「無くなる職業」のリストを発表した。米国の労働省のデータに基づき702の職種を分析し、AIやロボットにとって代わられる可能性が大きい職業は何かを選び出したのだ。その上位には、単純労働だけでなく、知的な仕事と考えられてきた職種もある。銀行の融資担当者や弁護士事務所の補佐官など、企業の業績や判例など膨大なデータを読み取り解析する仕事である。
 最近の統計によれば、先進国の中間層の所得が伸び悩んでいるというが、この分析結果と決して無関係ではない。

 ところで、いつも利用する大型スーパーでのこと。商品を籠に入れレジに向かう。レジの係員が打ち終わったので、代金を支払おうとすると、「2番でお支払い下さい」という。一瞬、何のことか分からない。(そうか自動支払機で支払えということだ)と気が付く。指定された支払機の画面に向かって、何とか支払いを済ませた。よく見ると、ほとんどのレジが自動支払いとなっており、従来通り係の人にお金が支払えるレジは二つしか残っていなかった。
 新聞によると、レジが完全自動化され無人となる店が近々できるとのこと。商品に埋め込まれたチップから情報を読み取り、すべて処理してしまうのだ。身近なところでもIoTはすでに始まっている。

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