作品の閲覧

「800字文学館」

一陽来復

濱田 優(ゆたか)

 今年2016年の冬至は12月21日(水)だった。
 誰もが知っての通り、冬至は一年中で昼間の時間が最も短い。東京では9時間45分、夏至のときより4時間50分も短い。
 この日を境に日は再びまた延びる。古代中国では冬至を一年の始まりとして、その月を正月、異称に十二支の一番手ねずみを当て「子(ね)の月」とした時期がある。その後「寅の月」が旧暦の正月になり、「子の月」は11月の異称になった。が、冬至を基準にして暦を作ることは変わらない。
 光りの消長に着目すれば、一陽来復の冬至が年の初めにふさわしい。しかし寒さ厳しい冬はそれから本番を迎える。この点では現行の新暦の元旦も五十歩百歩で、むしろ旧暦のほうが季節感に合う。旧暦で正月を祝う中国の春節の風習は、なかなかの生活の知恵と思われる。

 ところで、昼が一番短い冬至は、日没が最も早く、日の出が最も遅い、わけではない。2016年の東京の例では、日没が最も早くなるのは11月の末から半月間で16時28分。その後日没の時間は少しずつ延び、冬至の日には4分遅くなる。それでも日は短くなるのは、日の出がそれより速く遅くなるから。前述の期間に日の出は18分遅くなり、差し引き昼の時間は14分短くなる。日の出が最も遅くなるのは、翌1月1日で6時51分、冬至が過ぎても夜明けはまだ遅くなり続けているのだ。
 日の出、日の入り時間の折返し点付近では横ばいが続き、中間の春秋の彼岸前後の変化は大きい。

 秋に日没が早まることは子供のころ実感した。あのころは学校から帰るとすぐカバンを置いて外に遊びに行った。日の長い夏はいつまでも遊び惚け、「ごはんよ」という母の声を聞いて慌てて家に帰った。秋が深まると陽が沈みボールが見えなくなって家に帰っても、まだご飯が出来ていない。茶碗を叩いて母に催促をしたものである。
 室内でゲーム機に夢中になっている今の子たちは、季節の移り変わりを何で感じるのだろうか。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧