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「800字文学館」

大徳寺探訪

藤原 道夫

 大徳寺には何度か出掛けている。初めて見学したのは常時公開している「大仙院」、有名な枯山水を見ながら尤もらしい説明を受けた。その後暫くして父親の葬儀でお世話になった僧侶(臨済宗大徳寺派の末寺に属す)の紹介状を持参し、三か所の塔頭を訪ねた。その当時は知識を持ち合わせず、また現地での説明もなく、非公開の塔頭に上がって庭を漫然と眺めながらお茶を一服頂いた、というだけで終ってしまった。その後黄梅院や大方丈を見学し、禅文化の一端に触れることができた。一方で、門を閉ざしている塔頭が多く、大徳寺は閉鎖的だと思い続けていた。

 昨年(2016年)秋、千家の菩提寺である「聚光院」が公開されるという情報を得、早速予約を入れて現地を訪れた。入口で靴を脱ぎ方丈の端から上がるとすべての荷を預けさせられた。
 先ず方丈の五部屋にまたがる障壁画(国宝、狩野永徳・松栄筆、16世紀)を見学。廊下から部屋の内部を覗きながら説明を聞く。永徳24歳の時に描いた水墨画「花鳥図」や父松栄の「竹虎遊猿図」が素晴らしい。ちなみにここの障壁画は「モナリザ」が日本に来た返礼として、ルーブル美術館で公開されたとか。
 方丈の庭園「百積庭」は、千利休が整えたとされる名勝。背景の生垣と立ち木(夏椿など)、それに庭一面の苔が石組みを穏やかにしている。ここは以前にも見たことを思い出した。
 千利休の精神を汲むとされる二つの茶室も見学。窓の取り方(位置、広さ)、壁の色、床の間の造りなど、設計者は細部にわたって茶室の型を追求したことが察せられる。
 最後に三年前に落慶した書院に案内され、千住博画伯による襖絵「滝」を見た。二室の大広間の襖に群青色を背景に白い滝が幾条も描かれている。茶事の控えの間として使われる時は、濃い青が勝る一室には男性が控え、白色が勝る別の部屋には和装の女性が座すとの事、その場はさぞかし華やかであろう。

 大徳寺は奥が深い、機会があれば他の塔頭も探訪してみたい。

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