家庭内共同謀議
もう四十数年前のことで時効であろう。世田谷の自宅から鶴見へマイカーで通勤していた。その日に飲み会があることを忘れていた。課員一緒に日劇ミュージックホールで前田美波里ショーを観た後に、忘年会が銀座のビアーホールで催される。
酒気帯び運転に対し今ほどは厳しくなかった時代で、その時も退社後に「ままよ」と車で都心に向かう。田町辺りに車を置き、駐車料金をけちろうと途中で思いついた。駅の海側で夜間は人や車の通りも少ない閑散とした倉庫街に止め、其処からは国電で有楽町へ行く。
会を終え、深夜十一時過ぎに車に戻り、巧いやり方だったと内心頷きつつ帰宅の途につく。ところが品川駅前まで来たときにフェンダーミラーに何かがぶら下がり、バタバタしているのに気づいた。見ると「交番に出頭せよ」とある。当時でも酒気帯び運転と駐車違反が重なると、罰則が急に厳しくなる。休暇を取り錦糸町の交通裁判所まで行かねばならぬ。
妻に急ぎ電話して終電で田町駅まで来てもらい、彼女の駐車違反にしてくれと頼み込む。違反点数が増えるが妻もしぶしぶ承知し、無事にその場は解決。ところが後々までも何かの折にこの負い目を持ち出され、家庭内では時効がない。
今回の森友学園事件に関して国会での安倍首相の答弁を聞き、この苦い経験を思い出した。「妻は私人として名誉校長になったのであり、自分とは全く関係がない」と強弁する。これまでの彼の国粋主義的言動や家庭内野党と揶揄される夫人の言動から推して家庭内共同謀議がなされ、夫人が代行したに違いない。たとえ超安値での国有地払下げ問題や異常な教育を施す学園設立を政治的にもみ消しても、首相は死ぬまで夫人に頭が上がらないだろう。
彼の家庭問題はどうでも良い。国民の一人として幼稚園児に「安倍首相ばんざい」と斉唱させるような洗脳教育を首相が推奨・容認している事にヒトラーユーゲントやチャウシェスクの子供たちを連想し、戦慄を覚える。