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「800字文学館」

いそがしい墓参り

内藤 真理子

 菩提寺のある秦野にお彼岸の墓参りに行こうと、世田谷から東名に乗った。
 ラジオをつけると、ちょうどWBCの準決勝が始まるところだった。日本対アメリカ。場所はドジャース球場。解説は勿論日本人で日本寄り。小雨の降る中スタートした試合は、アメリカが先行。
 「満員のドジャース球場で、応援はアメリカより日本の方が勝っていますよね」
 「そうですね。この球場で大太鼓の応援なんて前代未聞ですよ」と勇ましい。
 一回表、三者凡退。菅野の丁寧な投球を絶賛。
 前方に、真っ白に雪化粧をした富士山出現。高速道路は、車の音がうるさいので聞き取りにくい。厚木を過ぎると、丹沢がま近になり、塔ヶ岳が雪の稜線をくっきりとみせている。
 野球は、0対0のまま三回を終わり、四回表アメリカの攻撃。車は秦野のインターを降り、一般道に出る。路面が静かになった。四回表、二アウトからイエリチの打った球を菊池がエラー。塁に出してしまった。二アウト一塁。解説は菅野の丁寧なピッチングをしきりに褒めるも、次のバッターにフォアボールを許し、一、二塁にランナーを置いたところでお墓に到着。

 墓参りを済ませ、車に戻ると、一点取られていたが、六回、菊池のホームランで一点を返し一対一。そこで近くの蕎麦屋に入り昼食。
 車に戻った時は八回の裏で、二対一で日本は負けていた。期待の筒香がフライを取られ凡退。九回の表、アメリカの攻撃。一打席目にホグマーが二ベースヒット。球場の割れんばかりの声援がラジオからガンガン響く。解説では日本側の応援もアメリカに負けていないそうだが、聞いている方にはわからない。
 後がない日本、なんとか0点に抑え、続く九回裏、中田翔からの打線。今回のWBCでもここから点を取ったのを何度も見たような気がする。がんばれ日本! 応援空しく三者凡退。終わった~。

 さてここからは、高校野球を聞きながら、福生にある私の実家の墓に参ろう。圏央道のお陰で、墓参りの梯子が出来るようになったのだから……。

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