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「800字文学館」

弘前公園の桜守

清水 勝

 弘前公園の桜を何としてでも観たくなった。そして満開日を自分の都合で4月24日と決めて出掛けた。外濠沿いの桜がお出迎え。おお、満開!快晴!
 弘前の桜を観たくなったのは、たまたま見たテレビ番組で弘前公園の桜守の紹介があったからだ。2600本の桜を日々観察し、病気になっていないか、根は傷んでいないかを診ているという。
 この見事な桜を見上げながら、なるほど弘前独特の剪定方式の賜物と納得。一般的には「桜切るバカ、梅切らぬバカ」といわれているように、桜は切り口から雑菌が入り病気になりやすいために、切ることはタブーとされている。ところが弘前では冬に大胆な剪定を行っているという。そこには弘前の特産物で、同じバラ科に属するリンゴ栽培の技術を応用し、弱った枝を見極め剪定し、切り口に墨を混ぜた薬剤を塗り病害を防ぐ等のノウハウがあるとのこと。
 もちろん、剪定だけではなく、施肥、薬剤散布、土の入れ替えや積極的な外科手術等の治療をしているという。弘前公園にはこうした桜守といわれる樹木医が四人もいる。
 こうした努力により、園芸種であるソメイヨシノの寿命は70年と言われている中で、弘前では日本最古のソメイヨシノ(樹齢128年)をはじめ樹齢百年を超える桜が400本もある。確かに弘前の桜は老木ではなく、貫禄がありながらも若さを感じさせてくれる。枝が四方八方に広がり、それぞれに花を咲かせているため、空いっぱいに花が広がり、快晴の青空の中に浮かんでいる。
 これもリンゴ栽培の芯止めの技術が活かされているからだという。上へ伸びようとする幹を切りとめ、横に伸ばすことで樹幹の内部へ日光が当るようすると花芽が増え、咲く花が多くなる。さらに樹勢が強いことで、それぞれの花芽の中の蕾が多く、それが一斉に開花するため、まるでたわわに実って咲いているように見える。見事!
 満開を観た次は少し時機を遅らせ、西濠一面が花筏となり、併せて両岸の桜も咲き誇っている情景を観たいと思った。

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