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「800字文学館」

我が家の古文書(二)

中村 晃也

(一)前回、昭和十二年に父親は一歳の私の徴兵保険に加入し、保険金は二千円、掛け金は半年払い五十一円四十銭であることを報告したが、後日保険のプロ清水さんからのメールで、これは、被保険者が徴兵年齢に達した時点が満期の積み立て保険の一種であること。当時の一円は現在の二六〇〇円で保険金は五二〇万円、掛け金は十三万円余りで子供にしてはかなり高額の、有資産家のお坊ちゃま保険であるとのことであった。

(二)昭和十三年大日本帝国政府発行の支那事變特別国庫債券が三枚でてきた。額面は拾圓で満期は昭和三十一年、利息は年参拾五銭である。表紙の肖像は誰だか判らない。お教えを乞う。
 また昭和十八年発行の大東亜戦争割引国庫債券は、昭和二十八年償還で発行價格は七圓、償還時は拾圓である。こちらは戦車と軍艦のイラスト入りである。

(三)同時期と思われる愛国婦人会淀橋分会、大成婦人会後援の家庭惣菜講習会の案内書があった。
 「東京瓦斯の四谷區内藤町の営業所(市電四谷大木戸下車)で開催。割烹着、筆記用具、フキン、小さな重箱か辧当箱を携帯すること。講習科目は日支惣菜料理一式、ご飯の炊き方より味噌汁の作方、漬物の付方、お惣菜一式を三ヶ月総回数十三回の講習で学ぶ」というのである。費用は参圓六十銭。
 現在のように電気釜やインスタント味噌汁の無い時代には主婦の必須の知識であったのだろう。

(四)昭和十八年東京市発行の家庭用燃料通帳は木炭、練炭、豆炭の配給用。
 昭和十九年東京都発行の家庭用品購入通帳は、味噌(月五百匁)、醤油(月一升五合)、酒類(隔月に酒五合、ビール二本)、菓子、塩(二百グラム)、砂糖(半斤)、食用油、石鹸、マッチの配給用で、次の注意書きが付いている。
 「空襲必至の情勢に鑑み、都においては食料品その他の生活必需物資、応急復旧資材等の貯蔵に万全の策を講じております。集団避難者、親戚知己等の許に避難した羅災者に対する配給は、一律に次の物資五日分以内が配給されます。米百五十瓦、味噌十匁、醤油一勺」。

 (以下続く)

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