シルクロードの旅 ~新疆ウイグル自治区、ウルムチにて~
西安、ウルムチ、トルファン、敦煌、嘉峪関を巡るシルクロードツアーに参加した。西安を一日観光して空路ウルムチへ入る。
ウルムチは、新疆ウイグル自治区の省都である。カザフスタンへ抜ける天山北路のこの街を砂漠地帯の辺境のイメージで考えていたが、楡の街路樹に包まれた緑豊かな街と知り驚いた。
しかしウルムチから天山山脈を越えた南は、タクラマカン砂漠が広がる地球上でも有数の乾燥地帯である。砂漠の東端には二十世紀まではロプノール湖があったが、今はない。天山山脈の降雪量が減ったためという。
古代、ロプノール湖畔に楼蘭という都市国家が栄えた。その楼蘭の遺跡から一九八〇年に四千年前の女性のミイラが発掘された。目が深く鼻が高いその女性は、ウールの衣服を纏い鹿の革の靴を履き白い帽子をかぶるアーリア系の白人だった。「楼蘭の美女」と呼ばれるそのミイラは、微笑むような表情でウルムチの博物館に眠っていた。いかにも悠久の歴史を感じさせるものだった。
新疆ウイグル自治区は人口約二千万人。トルコ系ウイグル族が住む地域だったが、漢民族の大量入植によって現在はウイグル族四五%、漢民族四一%、その他カザフ族などとなっている。
元々この地域は万里の長城の外側であり、「西域」と呼ばれてきた。それが一九四九年以降中国の支配下に置かれ、チベットと並ぶ最大の少数民族地域である。独立志向は根強く二〇〇九年には大規模な騒乱事件も起きた。中国に綻びが生じるとしたらこの地域から、ではないかと思い関心をもって眺めた。
しかしウルムチは、地下鉄工事が進み高層マンションが林立、バザールも賑わって、人々の生活は平穏のように見えた。特にゴミ一つ落ちていない街の清潔さに住民意識の高さを感じた。
この地域のウイグル族に対する言語、文化や宗教の厳しい抑圧があるといわれる。観光客の目線なので確かなことは判らないが、その反発が直ちに表面化するような状況にはないように思われた。