昆虫が世界を救う?
和風ラーメンに添えられたホウレン草の上で大きな青虫が寝そべっていて震えあがったことがある。真夏のビーチではラーメンのスープが妙に胡椒たっぷりで、よく見るとその粗挽き胡椒には手足があった。びっしりと蟻が浮いていたのだ。虫も殺せぬ女には虫が付きやすいとみえる。
「次世代の食」と題する記事によれば、2050年には90億人に膨らみそうな世界の胃袋を満たすには昆虫食に注目すべきだが、食の楽しみに繋がる「味」も重要なファクター。日本ではイナゴや蜂の子、ざざむし等の昔ながらの郷土料理が廃れつつある。それが今、お洒落なライフスタイルとして復活しつつあるという。
記者の取材に応じた某氏の話では、美味しい昆虫のトップ5は、1位=コオロギ(臭みがない、素揚げは川海老のよう)、2位=蝉の幼虫(海老のような香ばしさ。中華風の味付けで)、3位=桜の木につく毛虫(桜餅のような上品な香り。塩茹で)、4位=カミキリムシ(クリーミー。塩や醤油味のバター炒めで)、5位=南米に生息するゴキブリ(味噌や麹に似た香り。中華系の味付けと相性抜群)。コオロギラーメンや、トノサマバッタの唐揚げ、ミールワーム(ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫)のキャラメリゼなどが人気急上昇とのこと。
中国やタイでは昆虫を日常的に食べる。タイ料理ではタガメをペースト状にしたディップはフルーティな香りが素晴らしく、白蟻の卵と幼虫を香草と和えたサラダはトロリとした喉ごしと蟻酸の酸味がオツなのだそうだ。四川風炒めの蚕はカニミソみたいな美味だというし、蛾の幼虫を揚げたミャンマー料理「竹蟲」は見た目も味も「かっぱえびせん」だとか。
大の虫嫌いの私だが、神楽坂の裏通りにひっそりと佇む古民家居酒屋「伊勢藤」で数十年前に初めて食べたイナゴの佃煮は熱燗の「白鷹」にぴったりだった。老夫婦の店だからもう閉めたかと思っていたが、二代目が引き継いだ今も、地味で古風な肴が粋な「大人の世界」を醸し出している。