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「800字文学館」

『LDK』リビング ダイニング キッチン

大越 浩平

 我が家の食事は、朝食は納豆、焼き魚、卵焼き、漬物、味噌汁等の定番和食。昼食はパンか麺類、夜は料理番組に触発されたものや、スーパーで食材を見て決める。麺類は定番がいくつか決まっているが、悩みはパン選びだ。ひいきのパン屋がスーパーから撤退し、コンビニやスーパーの食パンは種類が多く選択に迷う。

 丸善で眼鏡の調整をしてもらい、書籍売り場で本を探していたが、その隣が女性向けの月刊誌棚で、とても七十八歳が手に取ることもないような、派手派手しい表紙に、「新しい文房具選びのはなし 完全女性目線」のタイトルが目に入った。家で使っているハサミに不満があり、立ち読みすると、数種類のハサミの評価をまともに感じた。本を購入し、帰途ハンズに寄り雑誌の推薦品を購入した。その月刊誌名は『LDK』。初めて知った名前だ。

 購入時には気付かなかったが、食パンの採点記事があった。食パンの生食とトーストを、味、食感、耳と皮の食べやすさ、香り、カロリー、添加物、コスパについて、四人のプロ、セミプロが採点する。六枚切り一枚の価格、カロリーも表示されている。面白い、これを参考に好みのパンを探したい。

 プチプラvsデパコス、コフレドールのデカ目効果で余白を消す❘さっぱり意味不明だ。ニトリ 無印 IKEAの安くて良いもの、これは分かる。雑誌には、ほとんど老人には無縁の商品が丁寧に評価されている。

 「テストする女性誌」をうたい「やらせ記事」が無いのが売りで、発行部数が二十万を超えるという。これはまさしく、『暮しの手帖』の「商品テスト」の遺伝子を引き継いだ雑誌だ。
 ハサミの使い勝手も良く女房も気に入ってくれた。高齢化社会到来、是非とも「高齢者向け商品テスト」のコーナーが欲しい、大きな活字で。

「商品テスト」の遺伝子を持つ雑誌に『通販生活』がある。夏号には、「おいしい介護食大研究」が掲載されている。

 フェイク情報全盛の時代に、この二誌は貴重だ。

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