作品の閲覧

「800字文学館」

四文字熟語で考えた

富岡 喜久雄

 最近は車中で読書より、スマホでゲームが主流だが、それでも高年男性の中には雑誌や新聞の数独や漢字パズルを楽しんでいる人を、時に見かける。海外で横文字ばかり読まざるを得なかったとき、漢字を多用した日本語の文章に出会うと、その速読性、含蓄に感心したものだ。
 だから四文字熟語が懐かしい。突然その一つがテレビで語られたのを思い出した。面従腹背である。某氏が「座右の銘」にしていたと言うのだ。勿論その意味するところを承知の上での皮肉なのだろうが、小中学生が真似しないかと教師や親は心配するかもと気になった。
 面前では唯々諾々と従うが、思いは別というなら、そんな人材ばかりの組織は疑心暗鬼で真っ暗だろう。俗世界では、時として顧客獲得用にうそ寒い巧言令色美辞麗句を方便として遣うことは多いが、だからと言って、これを社是とする会社は少ないだろう。
 権謀術数果てなき外交戦略では用いられても、仲間内ではマイナスだ。民間会社なら潰れても自業自得自己責任で済ませるが、公的機関がそれでは亡国の道は必然だろう。
 他意忖度も使いようでは時に惻隠の情として評価もできようが、それが小心翼翼自己保身からばかりでは情けない。面を冒して諫言する面冒諫言の矜持は何処へ、と言えば時代遅れの御託と言われそうだ。
 嘗ては士魂商才文明開化を乗り切り、つれて民族解放五族協和を目指したものの、神国無敵傲岸不遜に思いあがって、滅私奉公臥薪嘗胆一億火玉となっては見たが、末はご存じ焼野原。
 それでも偉い日本人、君子豹変七転八起で今があるらしい。
 今後は如何にと心配になってくるが。それを言ったら先のない者の
 ご意見無用、無駄無益だと言われそう。
 「なに、運転免許と同じく、余命すくない高齢者は選挙権も返上せよだと」。

機能障害、認知症でも人権にかわりはない筈と叫んではみるものの、
待てよ、生者必滅会者定離。それも合理と言われれば、
なんだかとても恐ろしい。ああ無情!

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧