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「800字文学館」

ディープ大阪体験記

塚田 實

 7月末、中国駐在時代の仲間とディープ大阪を楽しむ旅に出かけた。

 初日は北新地の「串かつ だるま きわ味」に行った。「だるま」は昭和4年に通天閣のある新世界で、日雇い労働者を相手に格安串かつを初めて提供した店として知られている。この串かつは最近大阪の味として、とみにもてはやされている。「だるま」は、今や国内外に16店舗を展開、最近は「創作串揚げ きわ味」と称して高級串かつ店を北新地とGINZA SIXにオープンした。「二度漬け禁止」のソースがうまかった。
 食後、道頓堀や法善寺横丁などミナミを散策したが、どこも中国人で溢れていた。戎橋はグリコのサインを背景に写真を撮る中国人に占領され、道頓堀の「ドン・キホーテ」では、爆買い中国人の熱気に圧倒された。
 現在、中国人の入国は関西空港が一番多いそうだ。昔は、関西空港から入り、京都経由東京に行くのがゴールデンルートとされ、大阪はスルーしていたが、今や大阪そのものを楽しむのだという。大阪の何となくごちゃごちゃと騒がしい雰囲気と庶民の味が中国人に合うらしい。
 翌日は鶴橋の東、かつて遊郭のあった今里新地のお好み焼き屋に行った。昔、子供の頃立ち入ってはいけないと言われていた。お好み焼きはふわふわと柔らかく最高の味だった。

 中国人で溢れる大阪ミナミだが、日本人に人気のスポットで中国人のいないところがある。「なんばグランド花月」だ。漫才や落語などのしゃべくり中心の演芸だから、中国人は楽しめない。「THE MANZAI 2013」で優勝した「ウーマンラッシュアワー」も出演していた。ボケ役の村本大輔は早口でなかなか話について行けない。こちらは耳が遠くなっているし、理解力も落ちている。ぼやっとしていると周りの観客が笑うので、よく分からないが合わせて笑うしかなかった。そう言えば昔アメリカで映画館に行ったとき、英語について行けず、やはり周りの笑い声に合わせて笑っていたことを思い出した。

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