修那羅峠の石仏と二つの三重塔
夏は友人の聖高原(麻績村)の別荘に5日間お世話になっている。そこを基地にして信州の名所巡りをするようになって10年になる。今年は修那羅峠の石仏(筑北村)と大宝寺の三重塔(青木村)、安楽寺の八画三重塔(上田市)を訪ねた。
修那羅峠の近くに朽ちかけた感じの安宮神社があり、まずは参拝。この神社のまわりにおよそ700体の石造物が立ち並んでいる。その内、230体ほどが石仏像で、ユニークな表現の異形像が多く、その素直な表情から「民間信仰の縮図」の代表的なものの一つとされている。それに魅せられて、石仏群を周りながら一体一体に手を合わせた。
次は「見返りの塔」と称せられる『国宝大法寺三重塔』を訪ねる。なるほどその美しさに思わず振り返るというのも納得だ。その美しさの理由を探ってみると初重が特に大きいことに気付いた。まさしく落ち着いた堂々とした姿で、眼下に広がる塩田平に睨みを利かせているようだ。そうか、上田ヶ原の合戦(甲斐国の戦国大名武田晴信と北信濃の戦国大名村上義清との戦い)も見ていたんだな。
続いて、有名な北向観音愛染堂の縁結びの霊木「愛染かつら」の巨木を眺め、我ら縁結びは用済みだとの思いから、別所温泉の傍にある『安楽寺』へと急ぐ。
ここにも『国宝八角三重塔』がどっしりと構えている。我が国に現存する八角塔としては唯一のものだ。確かに八角は判るが、ウゥンこれ三重塔か、四重塔ではないのか。説明によれば、初重は塔ではなくて、建物外部の軒下に回した庇で、裳階というそうだ。元来は風雨から構造物を保護するために付けられたもので、構造は本屋より簡素であり、建物を実際より多層に見せることで外観の優美さを際立たせる効果がある。外見的には重層建築と類似しているが、構造的にはまったく異なるもの。従って、安楽寺の塔はあくまでも三重塔ということになる。
信州のお寺は観光客に優しい。大法寺の拝観料は二百円、安楽寺は三百円だった。