作品の閲覧

「800字文学館」

頑張れ!栄村

清水 勝

 10月23日、雨の関越道を車二台で走る。当日は衆議院選挙の投票日であり、台風21号が上陸する恐れのある日だった。
 行先は長野県栄村。東日本大震災の翌朝に震度6強の地震が直撃した村である。仲間と東日本大震災被害を契機に、毎年被災地を元気付けようと現地の温泉に出掛けている。既に南三陸町、伊豆大島、御嶽山、福島を訪問し、今年は3・11の陰で報道されなかったもう一つの地震被災地栄村を訪ねた。
 栄村は長野県とはいえ新潟県に接した場所で、飯山線の森宮野原駅が玄関口となる。ここには「日本最積雪地点」の7.85m の標柱が建てられている。その傍に栄村震災復興祈念館『絆』がある。まずはここを見学。人口2,232人、高齢化率45%の栄村を襲った地震被害は、ピーク時には1,787人が避難し、建物被害は一部損壊まで含めると492棟で、実に住家の77%に当たるという。
 幸いにして被災から2年後に復旧作業は完了した。その間に寄せられた義援金・寄付金は11億円。ボランティア数は延べ3,900人だと記録されていた。
 次に道の駅『信越さかえ』に寄り、二次会用に当地産のおつまみ、リンゴ、柿、酒(隣村の新潟県津南町産『雪美人』)、お土産に山菜、キノコ、ソバ、郷土色豊かな餅を購入した。なお、この地はわら細工が盛んで、愛猫家には見逃せない「猫つぐら」が見事な編み込みで展示されていた。
 泊りは村役場に近い『北野天満温泉』としたが、栄村には他にも中条温泉、和山温泉、上野原温泉、切明温泉それに秋山郷近くの屋敷温泉がある。台風接近のためか旅館は貸切り状態。改めてキャンセルせずに決行し、少しは経済効果に寄与できたと安堵した。料理は信州サーモン、ヤマメ、信州牛に山菜料理、ソバと大満足。
 翌日は村役場を訪ね、僅かばかりの寄付金を届け、「長野県北部地震の被害概要等説明書」を頂いた。来年こそ被災地訪問旅行の行先がなくなるように祈りつつ帰路についた。

作品の一覧へ戻る

作品の閲覧