国難に劣らぬ難
「国難突破選挙」の日だった。朝からどしゃ降りの雨、台風が近づいていた。早々と投票は済ませたが、その日私は国難に劣らない難に直面した。
翌日早朝、桂林・北京旅行の出発なのだった。もともと予定になく急に決めた旅行だが、桂林と北京に四泊して五万円台という超格安ツアーをカミさんが見つけたのだ。北京には何度か行ったが、桂林は初めてなので気持ちが動いて行くことにした。
安いこともあって、このツアーには添乗員がつかない。初日は羽田発、北京で飛行機を乗り継いで桂林に直行だが、各自の責任で現地集合となっている。しかし、北京での乗り換え時間は二時間以上あるので安心だ、と思っていた。
そこへ台風接近のニュースである。選挙の投票日ということもありテレビは朝から台風情報を流しっぱなしである。最悪だった。翌朝羽田を発つ頃に東京最接近といっている。
国際線の飛行機は、台風では滅多に欠航しない。台風は二~三時間やり過ごせば通過するから、出発を延ばせば欠航にまで至らないということのようである。しかし出発が遅れることは、十分考えられる。
心配が始まった。遅れたら北京乗り継ぎはどうなるのだろうか。飛行機は両方とも中国国際航空(CA)だが、桂林に乗り継ぐ客のために国内線が待っているとは考えられない。折りしも中国共産党大会の開催期間中である。入国審査にも通常以上に時間がかかるに違いない。
旅行会社に電話した。「乗り継ぎは何とかしますから、取り敢えず予定通り集合してください」との返事。
何とかすると言われても心配は募る。北京で次の飛行機の切符を手に入れるのはどうしたらいいのだろうか、最悪、折り返して日本に戻る場合にその切符は買えるだろうか。
雨はますます激しくなる。楽しい旅行の前日の気分ではなかった。と夕方、旅行会社から電話があった。「ツアーは中止します」。難は去った。
そして選挙も終わった。国難はどうなったのだろうか。