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「800字文学館」

ベトナムが一番

野瀬 隆平

 海外から日本を訪れる外国人が年々増加している。街を歩くと日本語以外の言葉が耳に飛び込んでくることも珍しくない。多くの中国人が観光客として来日し、多額のお土産を購入してゆく「爆買い」が有名となった。
 ところで、最近統計データをみて驚いたことがある。来日する人が滞在中に使う金額を国別にみると、一人当たりではなんとベトナムが26万円で中国の24万円を抜いて一位になっているのだ。それほど裕福とも思えないベトナムからの旅行者が、中国人よりも多くのお金を日本に落としてゆくという統計の謎はどこにあるのか。

 その理由の一つは、この統計が「一人当たりの」という点にある。人数的には中国人の方がベトナム人より何十倍も多く来ているので、全体の金額としては当然のことながら、まだ中国のほうが圧倒的に多い。
 もう一つは、一回の訪日での滞在日数にある。中国人がせいぜい数日いるのに対して、ベトナムからの来日者は平均で36日も滞在しているのだ。長くいる、あるいはいられる訳は、日本に住んでいるベトナム人の身内を家族が訪ねてくるからである。技能実習生などとして日本で働く人が増加傾向にあり、最近ではおよそ23万人に達している、という背景がそこにある。
 滞在期間が長ければ、当然のこととして飲食費は増える。しかし、宿泊に使う金は少ない。住んでいる身内の住まいに泊まるのだろう。娯楽に使う金も極端に少ない。ちなみに、滞在中に娯楽に使う金が一番多いのはロシア人で、テーマパークに行ったり、ゴルフを楽しんだりしているらしい。
 要するに、ベトナムの人たちは日本にいるあいだ他の出費を極力抑え、浮いた金で家電製品などを買って帰るという堅実な姿が、統計の数字から浮かび上がってくる。

 ただ、疑問が残るのは、同じような状況にあるフィリピンやタイからの客に比べ、このような特徴がベトナム人に顕著にみられる点である。国民性の違いなのだろうか。もう少し分析してみる余地がありそうだ。

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