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「800字文学館」

どうした、日本の会社

野瀬 隆平

 日本の名だたるメーカーの不正行為が、次から次へと明るみに出ている。生産現場から離れた管理部門ではなく、最も信頼されている物造りの現場でのことであるだけに問題は深刻だ。そのような不正が以前から行われており、今それが外部に漏れ始めたということも注目すべき点である。永年にわたって醸成された企業風土に根差したもので、単に社長が頭を下げて辞めれば済むという問題ではない。

 一人ひとりの日本人は、善良で大きな悪事を働くような人間ではないが、大きな組織の一員となると仲間うちでの多少の悪には目をつぶり、内々に収めてしまおうとする。もしそのような空気が蔓延しているのであれば、抜本的な意識改革が必要である。
 あるアメリカの有力紙は、今回の事件にあえて言えば明るい兆しがあると報じていた。不正の発覚がユーザーからのクレームではなく、内部からの指摘で明らかになった点で、これを自浄作用が働き始めたと捉えているのだ。
 企業の儲けが会社や役員ばかりに分配され、従業員はそのご利益にあまり預かっていない。その不満が内部からの告発を促していると見ている。
 周りに知られることなく告発できる手段を持ったことも、背景にあるのかも知れない。インターネットを介して、匿名で広く世間に訴えることが容易に出来るようになったのもその一例である。

 このような問題は、日本の企業に限ったことではない。自分が属する集団や一部の人間が、自己の利益だけを考えて行動すると、世間から背かれ集団の存続すら危うくする結果を招くこととなる。何事も自分ファーストの考えに執着すると、結局のところ物事がうまく進まない。
 近江商人の心得に、「三方よし」というのがある。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」のことだ。商売は売り手と買い手の双方が満足できるもので、更に社会に貢献するものでなければならないとする。この精神こそ、世間全般に通ずる規範として改めて見直すべきであろう。

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